曇りなき眼で見定めブログ

学生です。勉強したことを書いていく所存です。リンクもコメントも自由です! お手柔らかに。。。更新のお知らせはTwitter@cut_eliminationで

哲学いろいろ

人はなぜ子どもを作るのか?

人はなぜ子どもを作るのか? 考えてみるとけっこう謎である。(本記事では答えは出してないよ。) 当ブログでは「反出生主義」についてちょくちょく書いてきた。子どもを作るべきではないという思想である。しかし「反」を掲げる以前にそもそも人はなぜ子ど…

蒸し返された成田悠輔の炎上、ジョセフ・ヒースの『ルールに従う』、人文社会系の学者は分厚い本を書くべきという話

成田悠輔先生の「集団自決」発言がまた蒸し返されて再炎上している。アンチ成田としては嬉しい。↓アンチ成田記事は下から辿ってください。 cut-elimination.hatenablog.com 成田先生ももっとハッキリとした釈明コメントを出せばよいと思うのだが、プライドが…

植村先生の「「哲学研究に哲学史は不要」論」論の続きを読んだわよ

前に書いた↓これの続き。 cut-elimination.hatenablog.com ↑ではSauer先生という人の論文と植村玄輝先生によるまとめ↓を取り上げた(Sauer論文のリンクは植村先生の記事内にあり)。 uemurag.hatenablog.jp 植村先生はその後もいろいろコメントを書いておら…

偉人の古典を研究するタイプの哲学はいずれ哲学ではなくなるんじゃないか

一年半くらい前に植村玄輝先生が紹介して話題になっていた論文を今さら読んだぞ! https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0020174X.2022.2124542 哲学史の研究は哲学の研究に不要と主張するHanno Sauer, "The End of History"という論文。といっても…

最近読んだ本を紹介しちゃおうかな(人生の意味の哲学、Webプログラミング、AI入門、クイックスケッチ)

最近読んだ本を紹介するぜ! 森岡正博・蔵田伸雄編著『人生の意味の哲学入門』 掌田津耶乃『作りながら学ぶWebプログラミング実践入門』 次田瞬『意味がわかるAI入門』 立中順平『たてなか流クイックスケッチ』 森岡正博・蔵田伸雄編著『人生の意味の哲学入…

最近読んだ本を紹介しちゃおうかな(意識の哲学、AI哲学、(資本主義が嫌いな人のための)経済学、作画史)

いろいろ本を読んだので紹介するます。 デイヴィッド・チャーマーズ、林一訳『意識する心』 鈴木貴之編著『人工知能とどうつきあうか』 ジョセフ・ヒース、栗原百代訳『資本主義が嫌いな人のための経済学』 沓名健一、小黒祐一郎『作画マニアが語るアニメ作…

最近読んだ本を大紹介!(日本アニメの革新、反逆の神話、近代美学入門)

またいろいろ本を読んだので紹介しまっせ。 氷川竜介『日本アニメの革新』 ジョセフ・ヒース&アンドルー・ポター、栗原百代訳『反逆の神話』 井奥陽子『近代美学入門』 氷川竜介『日本アニメの革新』 日本アニメの革新 歴史の転換点となった変化の構造分析 (…

最近読んだ哲学書を紹介するぜ!(分析美学、道徳、フッサール、ブランダム)

最近はいろいろ哲学書を読んだ。紹介します。 なんか読んだ本を逐一紹介するスタイルにすると私があまり本を読んでいないことがバレるので、どばっと紹介します。 ロバート・ステッカー、森功次訳『分析美学入門』 西村清和編・監訳『分析美学基本論文集』 …

東浩紀確定記述事件の顛末と絡んできた人の一覧

※本記事を書く前後でいろいろ教えていただいたことで、私の確定記述への理解もかなりあやふやだったことがわかりました。しかし「訂正する力」によってこの記事はどんどん良いものとなっています。 ゲンロンのイベントの動画の切り抜きツイートが流れてきて…

ジラール主義者が読む『現代思想 〈計算〉の世界』その7(最終回) 富山豊、長坂真澄

最終回! ↓これの続き! cut-elimination.hatenablog.com ↓これを読んでいくシリーズ! 現代思想 2023年7月号 特集=〈計算〉の世界 作者:森田真生,細谷曉夫,近藤和敬,フリードリヒ・キットラー,ユク・ホイ,谷村省吾 青土社 Amazon 今回はフッサールに関する…

ジラール主義者が読む『現代思想 〈計算〉の世界』その3 ユク・ホイ、丸山善宏、近藤和敬

↓これの続き。 cut-elimination.hatenablog.com ↓これの論考を一つずつ読んでいくシリーズ。 現代思想 2023年7月号 特集=〈計算〉の世界 作者:森田真生,細谷曉夫,近藤和敬,フリードリヒ・キットラー,ユク・ホイ,谷村省吾 青土社 Amazon ユク・ホイ「計算不…

ジラール主義者が読む『現代思想 〈計算〉の世界』その2 河西棟馬、木原貴行、渕野昌

↓これのつづき。 cut-elimination.hatenablog.com ↓これの記事を順番に読んでいくシリーズ 現代思想 2023年7月号 特集=〈計算〉の世界 作者:森田真生,細谷曉夫,近藤和敬,フリードリヒ・キットラー,ユク・ホイ,谷村省吾 青土社 Amazon 今回の3つの論考はどれ…

ジラール主義者が読む『現代思想 〈計算〉の世界』その1 森田真生、細谷曉夫、渡辺治

久しぶりに雑誌『現代思想』を隅々まで読みまっせ(「隅々」は言い過ぎだけど)。「〈計算〉の世界」という興味深い特集があったので。私は線形論理という計算機科学の文脈から出現した論理を研究しているわけだけど、論理の哲学というと言語との関連から語…

【様相論理】加地大介『もの』71ページで省略されている証明

加地大介『もの』を読んでいます。 もの: 現代的実体主義の存在論 作者:加地 大介 春秋社 Amazon 71ページに公理と定理が載っているが、証明が省略されているので考えた。 公理KとTが使われているっぽい。ヒルベルト式で証明体系を与えて、本書の公理を追加…

ギャラガー&ザハヴィ『現象学的な心』は良い本です

ショーン・ギャラガー&ダン・ザハヴィ『現象学的な心 心の哲学と認知科学入門』(石原孝二ら訳、勁草書房)を読んだ。毎週1章読んで話すゆるい読書会にて。 現象学的な心: 心の哲学と認知科学入門 作者:ショーン・ギャラガー,ダン・ザハヴィ 勁草書房 Amazon…

【ビーガンへの道】田上孝一『はじめての動物倫理学』を読んで勉強しました【コオロギ】

集英社新書の田上孝一『はじめての動物倫理学』を読んだ。 はじめての動物倫理学 (集英社新書) 作者:田上孝一 集英社 Amazon 本書は肉食を中心に様々な動物にまつわる倫理的な問題を論じている。私は動物倫理学と肉食の問題には関心があった。最初に倫理学に…

【成田悠輔-○-□-批判】広い意味での学者の倫理というか徳を考えよう

経済学者の成田悠輔先生が叩かれている。方々でいろいろな表現で「高齢者は集団自決したほうがよい」「老害を殺せ」といった趣旨の事を言っていたので。学者としてどれ程優れているか門外漢の私には正確には判らないが、タレントとしての成田先生は私は嫌い…

東浩紀『動物化するポストモダン』をネットリ読む 第3章「超平面性と多重人格」

↓これの続きだ! cut-elimination.hatenablog.com ↓この本を読んでます。東浩紀『動物化するポストモダン』 動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書) 作者:東浩紀 講談社 Amazon 最後の第3章なのだが、短いので簡単に。 もう20年以…

東浩紀『動物化するポストモダン』をネットリ読む 第2章「データベース的動物」

↓これの続きじゃ! cut-elimination.hatenablog.com ↓この本を読んでまっせ。東浩紀『動物化するポストモダン』。 動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書) 作者:東浩紀 講談社 Amazon 第1章の疑似日本の話は第2章では全く出てこな…

東浩紀『動物化するポストモダン』をネットリ読む 第1章「オタクたちの疑似日本」

いろいろアニメ関係の書籍を読んでいるけど、東浩紀先生の『動物化するポストモダン』をまだ読んでいなかったので読んでます。 動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書) 作者:東浩紀 講談社 Amazon 1章ずつネットリと読んでメモして…

還元的証明論と一般的証明論(プラウィッツより)

ワシって自分が専門的にやってる分野はごく狭い範囲しか読んでいなくて関係ない哲学分野の事ばかり書いているなあと思い、自分の専門*1である線形論理(を中心とした証明論と計算の理論)に近い所の読書をする事にした。 リーディングス 数学の哲学―ゲーデル…

『フィルカル』のアイドル哲学を読む その1 青田麻未「アイドルとハロプロ」

またフィルカルだ! フィルカル Vol. 2, No. 1 ―分析哲学と文化をつなぐ― 作者:高崎将平,青田麻未,小倉健太郎,高田敦史,岡本慎平,W・K・ウィムザット,モンロー・ビアズリー,長門裕介 株式会社ミュー Amazon 訳あって『フィルカル』に載っている青田麻未先生…

ノエル・キャロル『批評について』(森功次訳)という本を読んだ!

みんな買って読もう! 批評について: 芸術批評の哲学 作者:キャロル,ノエル 勁草書房 Amazon 批評とは何か、何であるべきかを分析した本。一般向けの本らしく、美学・藝術哲学初心者の私にも分りやすかった。 キャロル先生の大きな主張は「批評は理由に基い…

コイファー&チェメロ『現象学入門 新しい心の科学と哲学のために』という本を読みました

良い本なので買って読みましょう。 現象学入門: 新しい心の科学と哲学のために 作者:コイファー,ステファン,チェメロ,アントニー 勁草書房 Amazon ステファン・コイファー&アントニー・チェメロ著、田中彰吾&宮原克典訳。毎週1章ずつ緩く議論しながら読ん…

三木那由他『会話を哲学する』は素晴しい本だ!(それと『ぼっち・ざ・ろっく!』と『めぞん一刻』論)

みんな買って読もう! 会話を哲学する~コミュニケーションとマニピュレーション~ (光文社新書) 作者:三木 那由他 光文社 Amazon 三木那由他先生は言語哲学の研究者で、英語の堅い論文も書きつつ勁草書房から研究書も出しつつこういう一般向けのやさしい本…

『フィルカル』のアニメ哲学を読む その3 滝沢正之・佐藤暁「佐藤暁「声優と表現の存在論」をめぐる往復書簡」

↓これの続き! cut-elimination.hatenablog.com なのだけれどその前↓に取り上げた佐藤暁先生の論考を巡る往復書簡である。滝沢正之先生という人が批判的なメールを送っている。 cut-elimination.hatenablog.com フィルカル Vol. 1, No. 2 ―分析哲学と文化を…

『フィルカル』のアニメ哲学を読む その2 稲岡大志「堀江由衣をめぐる試論─音声・キャラクター・同一性─」

↓これに続く第2弾! cut-elimination.hatenablog.com フィルカル Vol. 1, No. 2 ―分析哲学と文化をつなぐ― 作者:高崎将平,要真理子,松永伸司,稲岡大志,大谷弘,モリス・ワイツ,長門裕介 株式会社ミュー Amazon 今回は『フィルカル』Vol.1 No.2の稲岡大志「堀…

『フィルカル』のアニメ哲学を読む その1 佐藤暁「声優と表現の存在論─〈棒〉とは誰か─」

『フィルカル』という哲学雑誌(ムック?)がある。 フィルカル Vol. 1, No. 1 ―分析哲学と文化をつなぐ― 作者:高崎将平,長田怜,河合大介,松本大輝,古田徹也,八重樫徹,佐藤暁,さとひろ,長門裕介 株式会社ミュー Amazon 分析哲学の割と本格的な論考から分析哲学…

動物(特に猫)に心はあるのかどうか─「もちまる日記」なるYouTubeチャンネルを見て考えてしまった

↓この動画をご覧ください。 www.youtube.com むぎまるという茶色の猫は一時的に預かっている猫で、去勢手術をした直後らしい*1。遺伝的には灰色のもちまるという猫の弟らしい。動画タイトルは「手術後の弟が心配すぎて一日中看病してる兄猫が優しすぎました……

不完全性定理と心の哲学について少し

不完全性定理やチューリングマシンの停止性の議論を使って人間の心は機械以上のものであると主張する人がちょくちょくいる。有名なのが大数学者・物理学者のロジャー・ペンローズ大先生である。モギケン先生もこう言っている。 チューリングマシンに万能性が…