ショーン・ギャラガー&ダン・ザハヴィ『現象学的な心 心の哲学と認知科学入門』(石原孝二ら訳、勁草書房)を読んだ。毎週1章読んで話すゆるい読書会にて。
↓前に読んでいたコイファー&チェメロ『現象学入門』で次に読むべき本として訳者が挙げていたので読んだ。
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入門というには難しく、原著の第3版では副題の「入門」が外れたらしい。
本書もコイファー&チェメロと同じく現象学を認知科学と合体させて論じている。フッサール、ハイデガー、サルトル、メルロ=ポンティといった古典的と言ってよい哲学者の知見を最新の認知科学・神経科学の解釈に使ったり、彼らの見解を科学的に検証したり(これを「現象学の前倒し」という)する。それによって分析的な心の哲学の伝統的な議論を時には(というかけっこう)批判する。
コイファー&チェメロではサルトルはそれほど重要でないという扱いだったが、本書ではサルトルの「前反省的自己意識」の分析が大いに参照されている。分析哲学では意識の高階説、即ち意識を何らかの知覚や思考についての知覚や思考と考える伝統があるが、サルトルはより微弱な自己意識が前反省的に存在していると論じた。この考え方が多くの章で導き手となっている。