ここのところBoris Engさんという人の博論"An exegesis of transcendental syntax"を読んでいる。↓でダウンロードできる。
ボリスさん(苗字の読み方がわからない)はフランスの人で、2023年にこの論文で博士号を取得し、今は在野にいるらしい(エンジニアをしながら研究しているとか)。博論のスーパーバイザーは気鋭の線形論理ストThomas Seiller先生。私のような日本で細々とジラール研究をしている人間には羨ましい環境である。
この博論は440ページくらいある大部のもので、ようやく半分を読んだところ。しかし前半はそれほどテクニカルな話はなく、歴史やジラール先生の思想面の解説が多い。
特に前半最後の第6章"Towards a transcendental syntax"は、後半のテクニカルな議論の前段階として、超越論的シンタクスの背景思想をわかりやすく解説している。この章が超越論的シンタクスの入門にたいへんオススメ。私はこれを読んで初めてジラール先生の難解な思想が見えてきた感じがした。ジラール先生の独特の用語であるConstatとPerformance、UsineとUsageなどなどが、論理学や計算機科学の具体的な例とともに解説されていてわかりやすい。
ジラール先生の原論文にいくつか当たった私からすると「あっここはボリスさんの独自解釈かな」と思って警戒するところはあるものの、ジラール先生の難しい文章を直接読むよりは断然オススメできる。これを読んだ後でジラール原論文を読むとだいぶ違うんでないか。
当ブログでもちょくちょくボリスさんの博論の内容を紹介していきます。それを踏まえたジラール論もやっていきます。