酷すぎる。
私がケロロ軍曹の熱心なファンだったら、福田雄一と小栗旬のことを殺しに行っていたかもしれない。
つまり駄作であるだけでなく、不快であり、怒りが込み上げるものになっている。
しかしここは一つ冷静になって、本作の何がそんなにクソなのか分析し言語化したい。福田雄一監督作品のセルフパロディがブチ込まれ、それでブチ込まれた小栗旬が舐めくさったコメントを出し、炎上しているのは周知の通りである。だが、ケロロ軍曹はもともとパロディを多発する作品だし、コメディなのだからふざけた演出やコメントがあってもただちに責められるべきではない。何がいけなかったのだろう。
私は小学生くらいの頃にテレビシリーズの『ケロロ軍曹』を見ていた世代である。長く見ていた記憶があるが、わりと漫然と見ていて、中身はよく覚えていない。ガンダムなどのパロディがあったのは覚えているものの、理解して見ていたかどうかはわからない。そんな大ファンではなかったので、漫画もほとんど読んだことがなく、劇場版もこれまで見ていない。しかしけっこう楽しんで見ていた記憶はある。オープニング曲も好きだった。
もともとパロディの元ネタがわかる大人向けの面もあった作品である。今回の劇場版も、レイトショーだったのもあり、私以外の客は私と同年代かもっと年配の人ばかりだった。
今回の劇場版は16年ぶりのアニメ作品らしい。すでに新しいアニメシリーズの制作が決定していて、そちらでは声優を一新することになっている。なのでオリジナルのキャストでは今作が最後になる。ギロロ役の中田譲治さんとかもう声を出しづらくなっているようなので、仕方がない。しかしだからこそ大事な映画であった。そんな大事な映画でやらかしてしまった。
まず映画が始まってすぐ違和感があるのが、ナレーションの下手さである。下手というか、力が入っていない。やる気が感じられない。ナレーションはシソンヌ長谷川である。ケロロ軍曹のテレビシリーズは、ナレーションを故・藤原啓治氏が務めていた。藤原さんのナレーションは小気味良くておもしろかった。しかし本作の長谷川は、なんか声に覇気がなく、発する言葉もケロロたちを小馬鹿にしたツッコミ未満のツッコミみたいなものばかりなのである。長谷川のインタビューや舞台挨拶での発言を見る限り、長谷川が悪いというより、福田(ら)から碌なディレクションがなかったことが伺える。藤原さんという亡くなった大声優*1の後釜を、特に作品に思い入れのないテレビ芸人にやらせ、適当な演出で済ます、これが最初の最悪ポイントである。
続いて前半のパロディラッシュについて。物語前半では、妖怪ウォッチ、進撃の巨人、鬼滅の刃、エヴァ、ウルトラセブン、仮面ライダーのパロディが次々と行われる。これなのだが、どれもこれも「ただパロディしているだけ」なのである。驚くべきことに、他作品のキャラクターやシーンに類似したものを出す、その不謹慎さをおもしろいと思っているのだ。それを裏付けるのが、またしても長谷川のナレーションである。他作品のキャラクターやシーンが出てくるたびに「怒られますよー」とか「あっ名前出しちゃった」みたいなことを言ってヘラヘラ小馬鹿にするのである。なんの意味も目的もわからぬまま、パロディとヘラヘラがダラダラダラダラ続く。確かにケロロ軍曹と言ったら往年のロボットアニメや特撮のパロディが持ち味だが、それはリスペクトがあるのと、マニアックな知識を共有するおもしろさあってのものだろう。ただの「こんなんやってみちゃいました、テヘ」みたいなので笑えるわけない(ただしエヴァとセブンはややマニアックだったので少し見れる)。そら進撃の巨人サイドも怒るよ。ボケとツッコミではない、ヘラヘラと茶化しである。
このヘラヘラパロディの最たるものとして、福田監督作品の勇者ヨシヒコと変態仮面と銀魂のキャラクターが登場する。そんで適当に芝居して、佐藤二朗がわざとらしく噛んだりする。しかも長い。これは本当に見てられなかった。見てられないと判断した人が多かったのか、福田組(この言葉も気持ち悪いが)が出てくるたびに、客席を立つ人が続出した。客席に残った人たちからは失笑が漏れて、場内が気まずい雰囲気になっていた。この福田組の何が嫌か考えてみたが、やはりケロロ軍曹もそのファンも到底リスペクトしていない作品のキャラクターたちが、物語上なんの必然性もなくねじ込まれたからだろう。ケロロ軍曹を舐めている、ねじ込んでもいい作品と判断しているのだな、と思える。福田組が好きな人なら楽しめたのかもしれないが。ところでそもそもヨシヒコも変態仮面も銀魂も原作がある(ヨシヒコは微妙だが)もので、その原作のファンはどう思っていたのだろう。
この舐めている感じ、コメディなんだし真剣にやらなくてもいいでしょうという感じ、これが映画というメディアと相容れないのだと思う。そこが福田が映画好きをイラつかせる所以なのだろう。アニメにとってもそうだ。ケロロ軍曹はコメディで、確かに緩い話である。しかし話が緩いからと言って、つくりまで緩くあってはいけない。むしろ本気で作るからこそどうでもいいシーンが輝きを帯びたりする。これは日本のアニメ史が、長年を懸けて達成してきたことでもある。事実、本作も絵のクオリティは総じて低くない。舐めているのは主に福田の脚本と福田組俳優どもである。
舐めていることが端的に表れているシーンがあった。クルルが登場したあたりで、ナレーションの長谷川が博士がどうのという説明をする。その際ケロロが葉加瀬太郎のモノマネをする。それに対して長谷川はまた小馬鹿にしたようにツッコみ、その後、あろうことか「ほらスベったじゃん」とか言う。
スベったじゃんじゃねーよ!
スベるとわかってたら脚本を変えろよ。おもしろいセリフ考えろよ。スベったじゃんとか言って茶化したらコメディが成立すると思ってんのか。舐めんな。
アニメというのは、カルト的な深夜ドラマと違って、すべてが人の手で構築される。アドリブ的なやりとりが偶然ハマることはほぼない*2(ごくまれにセリフをアドリブにして先に撮る実験作もあるが、今作は違う)。よって、佐藤二朗のわざとらしい噛み方とかスベり笑いとか、アニメにおいては手抜きでしかない。小栗旬の「思い入れありません」みたいなコメントもそうだ。本気でやっていないことをおもしろいと思うという考えをやめよう。
まとめ。本作がクソな理由
- 演出を手抜いたナレーション(テレビシリーズとのギャップが大きい)
- 目的がなくておもしろくないパロディ
- クソどうでもいい福田組のパロディ
- ただの手抜きをスベり笑いみたいにしてごまかす
しかし、である。ここまでの批判はだいたいが中盤までのもので、終盤の宇宙に行ってからの攻防は普通に見れるものになっていた。そこを重視するならケロロファンでも楽しめるっぽい。
あと、あのちゃんの歌は上手い。