曇りなき眼で見定めブログ

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河野真太郎『増補 戦う姫、働く少女』徹底批判シリーズその18 セカイ系問題とシャカイ系

 ↓これの続き

cut-elimination.hatenablog.com

 河野真太郎『増補 戦う姫、働く少女』

 第四章157ページで「シャカイ系」なる言葉が出てくる。これは杉田俊介先生の以下の記事でも出てきた言葉であるが、本書が初出のようである。

gendai.media

もちろん「セカイ系」との対比で作られた言葉で、セカイ系みたいな閉じた世界ではなく社会を描く作品とのことらしい。河野先生の想定では『踊る大捜査線』や『Doctor-X』のような組織をモチーフとした作品がこれに当たるとのこと。

 私はそもそも「セカイ系」という概念の妥当性を疑っている。それについては↓の記事を参照。

cut-elimination.hatenablog.com

本書もこの批判が当てはまる。大きな問題は、作品をカテゴライズしより良く理解するために概念を導入してはいない、という点にある。それを適当に済ませて観念的な議論にそそくさと移行してしまっている。本書のセカイ系およびシャカイ系論も、どういう特徴を持ったどの作品がそれに当てはまるのかという議論が十分でない。

 本書ではその後、個々の作品、というか特に『エヴァ』についてセカイ系やシャカイ系やポストフェミニズムとかいった切り口から述べられている。これについては次回以降で。今回述べたような、作品にそうした概念を当てはめる妥当性から疑って検討していく。