曇りなき眼で見定めブログ

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猫耳キャラの文化史を調査しました(しています)

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「羅小黒戦記」より


 突然ですが皆さん、猫耳キャラといえば誰を思い浮べますか?

 一人でも思い浮びますか?

 何人も浮んでいますか?

 ではできるだけ多く思い浮べて見てください?

 

 …

 

 猫耳キャラって意外と少なくないだろうか? 少なくとも私は、意外と猫耳キャラを知らない自分に驚いた。なので調べてみた。

 以下の記述はだいたい時代順になっているが、自分のなかの猫耳分類に強引に押し込めてしまった部分もあり、知識不足と相まって、特に後半は歴史と評論がごちゃごちゃでレポートとしてあまり出来がよくないものになってしまった。

資料

 まず、以下のサイト・ブログがものすごい情報量である。管理人さんのケモミミ、猫耳に対する並々ならぬ情熱が窺える。『総解説・猫耳史』という同人誌を発行しておられるようなのだが、入手方法がわからなかった。見てみたいです。

sneko.net

kemomimi.doorblog.jp

しかし、私のような猫耳ニワカにはちょっと情報量が多すぎるので、こちらのブログは深掘りするときに参考にします。

 ニコニコ大百科はコンパクトにいろいろな情報がまとまっているので、基本的にこれをもとに調べたり考察してみた。

dic.nicovideo.jp

猫耳の黎明

 1960年代くらいまでのマンガやアニメを見てみると、猫耳誕生までの試行錯誤が垣間見える。とかいうと猫耳が先にあってそこに向っていたみたいになるが、もちろんそんなわけはなくて、当時はまだ猫耳という言葉も概念もなかった。

擬人化動物キャラ

 猫耳はなくても猫のキャラはたくさんいる。「トムとジェリー」のトムのような直立二足歩行する猫や、『長靴をはいた猫』のように人語を話す猫もいる。

長靴をはいた猫

長靴をはいた猫

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猫に限らなかったらミッキーマウス鳥獣戯画もそうであろう。

ケモい人間(?)キャラ

ヘケート

 手塚治虫の『リボンの騎士』の登場人物のヘケートが猫耳の元祖という説がいろんなところに書いてある。私はこのキャラクターを知らなかったのだが、調べた感じ、ミッキーマウスのような見た目ではあるが猫耳ではないんじゃないかな〜という感じだった感じである。

ねこ娘

 この頃の猫キャラの代表格は『ゲゲゲの鬼太郎』のねこ娘であろう。ねこ娘はかなりいろいろなバリエーションを経て完成したキャラであるが、1968年のアニメ第1期ではだいたい確立している。

 ここで重要なのは、ねこ娘は猫耳ではないということである。眼や歯や性格が猫っぽいというだけで、耳は人間なのである。やはりこの頃は猫耳という発想がそもそもないのだろう。

 しかし1971年の第2期で重要そうな変化が起こる。ねこ娘がリボンを付けるようになるのである。これは現在の「鬼太郎」まで踏襲されている。このリボンがちょっと猫耳に見える。

ク・メル

 アメリカのSF作家コードウェイナー・スミスの「人類補完機構*1」シリーズという小説に出てくるク・メルというキャラが、日本語版の挿絵で猫耳で描かれているらしい。私はSF小説に全くもって疎くてちょっと調べがついていない。「人類補完機構」というのはエヴァンゲリオンの「人類補完計画」の元ネタらしく、70年代に邦訳が出てSF好きの間ではよく読まれていたのだろう。以下にその影響力が指摘されている。

kemomimi.doorblog.jp

猫耳の革命

斬新なマンガ表現としての猫耳

綿の国星

 いわゆる"猫耳"というモチーフの源流は(よく言われていることだが)『綿の国星』のチビ猫が大きいのだと思う。

綿の国星 1 (白泉社文庫)

綿の国星 1 (白泉社文庫)

 

綿の国星』は1978年に少女マンガ雑誌「LaLa」で連載が開始され、以後いろいろな媒体で発表されいてる。

 チビ猫は設定上はただの猫である。獣人とかではない。しかし他の猫とほとんど逢ったことがないまま人間に拾われたので自分のことを人間だと思っていて、そのチビ猫の主観をとおした世界が描かれたマンガなのである。だから猫が人間の姿をしていて、かろうじて耳が猫を表すアイコンとなっている。

 という具合に『綿の国星』は非常に凝った表現がなされた作品である。作者の大島弓子先生は萩尾望都先生らとともに「花の24年組」と言われる少女マンガ家のひとりで、少女マンガに革新的な技法を持ち込んだ世代の人物である。マンガ史的な話をしておくと、1980年前後から「ニューウェーブ」という流れが起きて、大友克洋を代表とした新時代のマンガ家が現れる。後述する吾妻ひでお先生もニューウェーブのひとりに数えられることがある。24年組の斬新なマンガ表現はニューウェーブ世代にも影響を与えているんじゃないかと思うが、私はよく知らない。誰か教えてください。ただ、ニューウェーブの代表格である高野文子先生の「田辺のつる」という1980年に発表された短編(『絶対安全剃刀*2』所収)は認知症の老婆をその主観から幼女のように描いた作品で、これには『綿の国星』の影響があるとかないとか。

 つまり猫耳は、ものすごく高度な表現技法として誕生した部分があるのである。それは1980年前後のマンガ・アニメ文化の更なる開花と深く関連していたものと思われる。猫耳の革命はマンガやアニメの表現上の革命と連動していたのだ。逆に言えば、それくらいの発想の転換を必要としたためになかなか誕生しなかったのだろう。

ブラック・ジャック「ネコと庄造と」

 ここで手塚治虫に戻ってくる。『綿の国星』の少し前に『ブラック・ジャック』の「ネコと庄造と」というエピソードが発表された。以下の巻に収録。

この話は、庄造という男が事故で妻子を失い、自身も脳に後遺症を負って猫を家族と思い込んでいる、というものである。この庄造のイメージのなかの猫たちが猫耳の人間として描かれている。これは『綿の国星』とちょうど逆であるが、発想としてはかなり近い。しかしもちろん『ブラック・ジャック』は一話完結形式なので、この一話の数シーンだけで終っている。大島弓子先生がこれに影響を受けたのかどうかはわからないが、やはり手塚治虫は偉大である。

猫耳の隆盛

 1980年代には猫耳サブカルシーンにおいて流行を見せる。しかし大流行したというわけではなさそうで、よくわからない。冒頭で紹介したブログを参考に、今後も勉強していきたい所存。

萌えとしてのネコ耳の源流

  「萌え」という言葉はおそらく90年代にできたものだが、80年代にはいわゆる萌えキャラの原型のようなものが現れる。その代表格は吾妻ひでおのマンガ作品のキャラクターである。当時は「ロリコンブーム」などと言われた。吾妻先生は70年代には「週刊少年チャンピオン」で活躍したが、のちにマイナー誌へ拠点を移す。ここでの試みがオタク文化というものの隆盛へ繋がっていくとかそういう感じらしいのだが、私はあまりよく知らない。しかし教養として重要そうなので勉強しておきます。

シャン・キャット

 吾妻ひでお先生のマンガ作品およびそこに登場する猫耳のキャラクターの名前である。以下に収録。

短かったが1979年に「チャンピオン」で連載されていた。『綿の国星』の開始からそれほど経っていない。吾妻先生が『綿の国星』を見て影響を受けたのかどうかはわからない。吾妻先生は少女マンガからの影響はけっこうあるらしいので、なくもないかもしれない。吾妻先生はSFマンガ家でもあるので、それよりはク・メルの影響のほうがありうるかもしれない。

 そして話は『うる星やつら』に似ている。シャンという化け猫が来て青年に一方的に求愛していろいろなアイテムで騒動を起こす。『うる星やつら』の開始は1978年なのでこれも近い。『うる星やつら』は開始当初はラムちゃんが主人公ではなかったし不定期連載だったので、影響関係は微妙である。

 主人公のシャンはネコマタマタなる化け猫という設定である。なのでチビ猫とは違い、人間でも猫そのものでもない種族である。

漫画ブリッコ

 80年代に存在した伝説的な成人向けマンガ雑誌である。この雑誌こそがオタク文化というものの大きな源流のひとつである、らしい。私はこういう80年代文化論みたいなのはまだまだ勉強不足である。大塚英志先生が編集長をやっており、ロリコンブームを巻き起こしたり、のちのカリスマ漫画家・岡崎京子を発掘したりと、後世のサブカルチャーに多大なる影響を与えたことは間違いない。マイナー誌に拠点を移した吾妻ひでお先生もここで描いていたようだ。

 以下のサイトで各号の目次を確認できる。

www.burikko.net

84年の各月の号の目次を見てみると、「THE猫耳コンテスト」ないし「THE猫耳イラストコンテスト」なるタイトルがあり、猫耳に関するコーナーがレギュラー化していたことがわかる。それと「猫耳」という言葉も当時からあったわけだ。ではそれ以前はどうか。

www.burikko.net

漫画ブリッコ」は1983年5月号から編集長が大塚先生に代り、大幅にリニューアルする。それによっていまでいう「萌え」の路線が開拓されたようである。そのリニューアルの翌々7月号に「猫耳大好きっ!」というイラスト企画がある。それ以降徐々に猫耳企画が定着していったようだ。

80年代の同人誌

ケモミミ生活 ~獣耳作品情報ブログ~ : 最古のネコ少女同人誌?『CAT PEOPLE』について(1)

 ↑こちらに素晴しい記事がある。少なくとも1983年には「CAT PEOPLE」というネコ少女専門の同人誌が存在したらしい。いま私は「ネコ少女」と書いたが、この同人誌ではそのような表現を使っているとか。前節の「漫画ブリッコ」は1983年に「猫耳」を冠した企画をやっていたので、これくらいの時期は「猫耳」という用語が定着するかどうかの過渡期だったのだろうか。もちろん「猫をモチーフとしたキャラ」を「猫耳キャラ」と言ってしまうのはいろんなものを捨象してしまうので、ただ「猫耳」という言葉だけが相応しいわけではないだろう。

ファッションとしての猫耳の源流

 もう一つの重要な流れは、ファッションとしての猫耳である。つまり、身体的特徴として猫の耳が生えているのではなく、猫の耳の形をしたファッションアイテムを付けているキャラクターである。これはファッション業界で起った流れかもしれないが、キャラクターデザインとして取り入れられている例も多い。

アラレちゃん

 この流れの初期のものでとりわけ影響力が大きそうなのは『Dr.スランプ』のアラレちゃんである。アラレちゃんは翼の飾りがついたキャップを被っていることが多いが、大きな猫耳のついた帽子を被っていることもある。

 そもそもアラレちゃんはファッションへの影響がかなり大きい作品だと思う。鳥山明先生はバトルマンガの始祖のひとりだが、ファッションアイテムやガジェットのデザインも天才的である。アラレちゃんの掛けている大きなメガネは当時爆発的に流行ったし、そもそもメガネをオシャレに活用するという態度に本作が与えた影響は大きいのではないだろうか。そんな作品なので、猫耳に関しても先駆的なセンスを発揮していたのではないかと考えられるのである。

FF3の導師

 私はゲームの知識が全くと言っていいほどないのでたいしたことは書けないのだが、1990年に発売された「ファイナルファンタジーⅢ」の導師というジョブのデザインが猫耳の付いたフードを被っている。当時のゲームはまだドット絵なので、アラレちゃんとは違って猫耳だけがキャラクターの特徴として機能している。こうした記号的というか「パッと見でキャラクターが判別できるような特徴」としての猫耳というのは、ゲームの美学に非常に適合しているのだと思う。

猫耳の成熟

 00年代には猫耳はキャラクターの属性として定着し、もはや当り前のものとなる。猫耳が認知された結果として、特段の設定や説明がなくともデザインに取り入れられるようになったのだと思う。

萌え記号としての猫耳ファッション

 先述のFF3の導師のように、そのキャラクターを判別する記号という側面が強い猫耳キャラがいる。キャラクターの背景設定が強くあるわけではなく、ただカワイイからという感じ。なお、この頃には「萌え」という言葉も確立する。

デ・ジ・キャラット

 2000年前後に一世を風靡したコンテンツである。当時のオタク文化の象徴みたいな感じだったようで、東浩紀先生の『動物化するポストモダン*3』(2001)でなかなかの熱量で論じられている。近年の「ラブライブ!」や「けものフレンズ」のように、キャラクターや世界設定が先行して作られて後から様々なメディア展開をしていく仕組みのコンテンツで、その先駆的なものである。そのプロジェクト全体の名前と、メインのキャラクターの名前がデ・ジ・キャラットである。

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そしてこのデ・ジ・キャラットというキャラクターが猫耳の帽子のようなものを被っている(他にも猫耳のキャラクターはいる)。

 そういう仕組みであるから、記号的な差別化が重要なのであろう。背景の物語的な設定よりもパッと見の特徴がキャラクターの特徴となる。

 なお、東先生の『動物化するポストモダン』では、そういった仕組みのあり方からさらに論を拡げて、斯様な物語を欠いた記号の連なりこそがオタク文化の本質だという議論をしている。こういうのを「データーベース消費」という。

月詠・葉月

 私が知るなかでこの「萌え記号としての猫耳ファッション」が最も鮮烈なのが『月詠 -MOON PHASE-』の葉月である。

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ヴァンパイアという設定なのだが、猫耳の飾りを頭に付けている。ヴァンパイアと猫耳の繋がりはよくわからない。

 特筆すべきは、2004年放送のアニメの主題歌「Neko Mimi Mode」である。この曲にはメロディーがなく、葉月役の斎藤千和さんが「ネコミミモードネコミミモードでぇす」などと連呼するだけである。まあ00年代半ばの猫耳のイメージを知るうえで貴重な資料でしょう。またアニメは新房昭之総監督・シャフト制作で、こちらも注目ポイントなのである。

猫耳コスプレ

 コスプレという文化は1980年代のコミックマーケットにまで遡るとWikipediaに書いてあったが、90年代から00年代にさらに爆発的に普及したらしい。また、日常を舞台にしたマンガやアニメやライトノベルが増えた。作中にオタク趣味のキャラが出てくるのである。それに伴い、これまでような元々の性質として猫耳グッズをつけているのではなく、コスプレとして着脱する猫耳がトレードマークとなるキャラが増えたんじゃないかと思う。これはあくまで印象なのでなんとも言えない。

 デ・ジ・キャラットや葉月のような常時あるいは通常時に猫耳を付けているキャラと、普段は付けていなくてたまに付けて似合う、というのはだいぶ違う発想だと私は思う。

あずにゃん

 具体例を挙げればすぐに納得していただけると思う。もっとも典型的なのが『けいおん!』の中野梓である。「あずにゃん」というあだ名が示すとおり、よく猫耳のカチューシャを付けているイメージがある。これは顧問の先生がコスプレ好きでいろいろな服やグッズを持っていたためそういう流れになる。以下の回。

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 また、この頃にはメイド喫茶も一般化していたが、なぜか猫耳とメイドはよくセットになる。皆さんもイメージがあると思う。この起源は謎で、今後の課題とする。情報があったら提供してください。あずにゃんも「猫耳メイド」のコスプレをさせられそうになる。

 ものすごく大雑把な分析をすると深夜アニメとかオタク向けアニメというのが増加した結果ということだと思うが、オタク文化であるコスプレがマンガやアニメのほうへ逆輸入されるのである。このねじれがこの時代の特徴だと思う。それでさらにあずにゃんのコスプレをするとなると猫耳を付けることになるだろうから話はまたややこしくなる。

女装したハヤテ

  私のなかで猫耳キャラといったら何故かまっさきにこれが思い浮ぶ。

ハヤテのごとく』の主人公ハヤテが女装させられたときに猫耳がトレードマークとなるのである。

 私は昔『ハヤテのごとく』のテレビアニメをなんとなく見ていただけでよく知らないのだが、これはどこまで定番のネタなのだろう。あずにゃんほどは有名ではないと思うのだが、私の印象には強く残っている。ただし、調べてみるとウサギ耳のパターンもあるっぽい。

 ハヤテは執事であり、女装するとメイドの格好になる。やはりこれと猫耳の相性が良いために猫耳を付けることになるのだろう。と思う。

反転する猫耳

 この猫耳文化史にうまく位置付けられないのだけれど、絶対に触れざるをえない作品がある。

猫の恩返し
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 単一の猫耳作品のなかでは最大のヒット作だと思う。それはぶっちゃけスタジオジブリ制作という特殊な条件が大きいだろうが、いまでも金曜ロードショーでたびたび放送されて愛されている名作である。つじあやのさんの主題歌も良い。原作はマンガだが、宮崎駿が依頼して描いてもらったそうなので、アニメありきの企画である。

 この作品がおもしろいのは、人間が猫の世界に馴染むために猫耳を付与されるという点である。これは後述する「異種族のアイコンとしての猫耳」に近いが、人間に生えさせるという点で逆のようでもある。

猫耳の現在

 ここからは2010年代から現在までの猫耳の動向を見ていこう。

獣人の復権

 2010年代はグローバリゼーションや多様性の尊重を背景として(だと思うのだけど)種族間の対立や融和をテーマとした作品が増えたように思う。00年代にはファッションアイテムとしての使用が目立った猫耳だが、いまいちど「人間ではないもの」の象徴としてデザインに取り入れられる例が出てきた。

ピトー

  『HUNTER×HUNTER』のキメラアント編は2003年頃からやっていたが、こうした種族間の対立的な流れの先駆的なものなんじゃないかと思う。

HUNTER×HUNTER モノクロ版 18 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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キメラアント編はこの巻からです。

 キメラアントは、他の動物を食べてその動物の特徴を持った子供を産むアリである。それが人間を含めたいろいろな動物を食べる。なので人間のような見た目になんらかの動物の特徴を具えたキャラクターがたくさん登場する。そのなかでネフェルピトー猫耳である。

 物語では人類とキメラアントの存亡をかけた戦いが繰り広げられる。

けものフレンズ

 2010年代に最もヒットした猫耳キャラは『けものフレンズ』のサーバルだと思われる。

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 家猫ではなくサーバルキャットがモチーフなので耳が長い。猫耳を異種族の象徴として使うとしても家猫は野生動物ではないのでその効果は薄れるような気もしてくる。その点でサーバル猫耳は一石を投じている。後述する「羅小黒戦記」のシャオヘイはそのあたりに意識的なんじゃないかと思う。

猫娘症候群
猫娘症候群: 1

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 ネコ太郎さんというマンガ家による猫耳百合マンガである。私はけっこう連載を追って読んでいたのだが、アニメ化されるほどヒットはしていない。

 この作品の世界では猫耳は、現実における障害のようなものとして描かれている。読んでいる側からするとかわいいが。人間が発症して猫耳が生える、あるいは先天的にそういう体質である、そういう猫耳キャラが出てくる。当人にとっては身体的コンプレックスとなりうるものが、他者からしたらかわいいものに見えうる。猫耳のそういう微妙な感じを取り上げていて、非常に現代的なテーマを持った傑作である。

キャル

 2021年5月現在最もホットな猫耳キャラは『プリンセスコネクト!Re:Dive』

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のキャルじゃないかと思う。こちらもゲームはよく知らないし、実はアニメもそう見ていない。あと深夜アニメは移り変りが激しいのですぐに忘れられてしまうかもしれない…。

 キャルも獣人というカテゴリーでいいだろう。最近はこういった異世界もののヒット作が多くそういう作品ではどういう種族がいるかとかも細かく設定されていがちである。キャルもそれである。

羅小黒戦記

  「けもフレ」のところでも述べたが、猫というのは野生動物ではない。なので猫耳を獣人の象徴として使うのはちょっとズレているのかもしれない。しかし当ブログ激推し作品の「羅小黒戦記」(本記事冒頭の画像)にはさらなる大きな転換がいくつかある。

 主人公のシャオヘイは森に住んでいた猫の妖精だが、開発によってそこを追われる。そこからの冒険を描いたのが劇場版であるが、それに先行するWeb版ではシャオバイという女の子に拾われてペットというか家族になる。シャオヘイは本姓的には黒猫の姿をしているが、変化術によって人間の姿になれる。ただし耳は上手に消せない。おそらく「羅小黒戦記」の作り手は意図的にやっているだろうが、猫を人間と自然の中間に位置するものとしてキャラクターを作っている。また、劇場版はバトルものであるが、決して人間vs異種族ではない。この点も興味深い。シャオヘイというキャラクターの複雑さが垣間見える。

 Web版では中国のニコニコ超会議的なイベントに行く回がある。多くの人間がコスプレをしているので妖精が紛れ込める。注目すべきは、作中世界にコスプレという文化が存在しているという点である。前節のとおり、コスプレはマンガ・アニメ文化から派生して、さらに日常系のマンガやアニメに逆輸入された。しかし「羅小黒戦記」は普通に猫耳が生えたキャラクターも出てくる。こうしたサブカルチャーをメタ的に取り込むところも本作の魅力だと思う。劇場版で人間体・猫耳姿のシャオヘイを見た周囲の人がクスクス笑うシーンがあって、どうもシャオヘイが猫耳のコスプレをしていると思って笑っているらしい。そういうねじれがおもしろい。

そういう細かい設定とかどうでもいいと言わんばかりの猫耳

  「羅小黒戦記」の猫耳は非常に複雑な設定を持っていたわけだが、それとは逆の方向へ進化した猫耳もある。これは私にとってはたいへんな衝撃だった。

猫又おかゆ、文野環

 VTuberである。猫又おかゆも文野環も人間の身体に猫の耳だけが付いた、れっきとした猫耳キャラである。彼女らに共通するのは、どちらもただの猫だという点である。じゃあなんで耳以外は人間の見た目なんだという話だが、どうもそのへんは特に理屈があるわけではないらしい。これには驚いた。

  『綿の国星』のチビ猫はそもそも斬新な表現として猫耳に到達したのだった。その後も単なるアイテムとして使われたり重大な意味が付与されたりいろいろな歴史やバリエーションを経た猫耳。私もいろいろ意味付けを試みたのがこの記事だが、考えてみれば別になんだっていいのである。

 そういう緩さやツッコミどころを許容して楽しむ感じ、こういう仲間意識がVTuberの配信の楽しさなんじゃないかと私は睨んでいる。とすれば猫耳の必然性のなさというのはこれらのVTuberにとって本質的な特徴といえよう。

猫耳の未来

 現代の例えば日本を舞台にして獣人系の猫耳キャラを出すのは難しくなっている。何故なら猫耳が文化として根付いてしまっているためにそれが獣人の性質としての説得力を持ち得ないからである。かといってファッション系猫耳ももはやありふれたものになっており、これをキャラクターの個性としてそのまま使ってもあまり良い結果にはならないだろう。

  「羅小黒戦記」は日本のサブカルチャーに対する独特のメタな視点によって生れた中国発の傑作だと思う。このような戦略的な作品は今後も作り手の工夫次第でいくらでも現れうるだろう。

 とか思っていたら、もっと衝動に忠実なただかわいいだけのVTuberの存在を知り、更なる衝撃を受けた。

 猫耳は深い。実に深い。これからも、私のちっぽけな常識を軽く飛び越えるような猫耳キャラが現れるだろう。

 猫耳の未来に幸あれ。

猫耳の後記

 猫耳の有名キャラをまとめる記事にしようと思ったら、途中でS猫出版部さんの存在を知り、己の猫耳無知を思い知った。いろいろ意味付けを試みてしまったが、こういうのはなによりも資料・史料が重要であり、いつかもっとこうした研究が大々的に流通してこそ評論の意義が生れるものと思う。