ありがちなタイトルをまとめました。
(若い)○○の肖像
ジェイムズ・ジョイスの『若い藝術家の肖像(A Portrait of the Artist as a Young Man)』より。
例:伊藤整『若い詩人の肖像*1』(伊藤整は英文学者でもあってジョイスの『ユリシーズ』の翻訳(共訳)もしている)
意外と少ない!
〇〇批評宣言、〇〇宣言(「○○」は漢字のことが多い)
蓮實重彦『表層批評宣言*2』より。のちに草野進という人が『プロ野球批評宣言*3』という本を出した。その影響か、それまで批評の対象でなかったようなものを批評するときにこういうタイトルがよく付けられる。なお草野進は蓮實先生のペンネームだと言われている。
例:米澤嘉博『マンガ批評宣言*4』、PLANETS 6「特集 お笑い批評宣言」
〇〇2.0、3.0、4.0、5.0、…
そもそもは「ウェブ2.0」という2000年代半ばのインターネットの変革を表す言葉が由来である。それでいろんなものに「2.0」を付けて変革とか進化を表すようになったが、最近は本のタイトルなんかで3.0, 4.0, 5.0, などとインフレしてきている。
例:「春日2.0」(オードリーのオールナイトニッポンで2012年にやっていたコーナー。いろんなものに「2.0」を付けて進化させるというもの)、落合陽一『働き方5.0*5』
これからの〇〇の話をしよう、これからの〜
マイケル・サンデル『これからの正義の話をしよう*6』から。この本の原題は"Justice: What's the Right Thing to Do?"である。「これからの」という言い方は本のタイトルでかなり広く見られる。サンデル先生はガチガチの哲学者だが、この本は先生の講義を収録したテレビ番組が話題となり哲学と以外の人にも広く読まれた。ビジネスパーソンにもウケが良かったようで、ビジネス書のタイトルによく見られる。
例:マキシマム・ザ・ホルモン「これからの麺カタコッテリの話をしよう*7」(マキシマム・ザ・ホルモンはバンドだが、これはCDとマンガをセットで出したものらしい)、リン・エンライト、小澤美和子訳『これからのヴァギナの話をしよう*8』(原題は"Vagina: A Re-education"でサンデル先生の本当は全然ちがう)
○○大全
何が発端かはわからないが、近年「〇〇大全」というタイトルの本がよく出ている。すごく大袈裟だなあ、と思う。