曇りなき眼で見定めブログ

学生です。勉強したことを書いていく所存です。リンクもコメントも自由です! お手柔らかに。。。更新のお知らせはTwitter@cut_eliminationで

【「しん次元」の「しん」は「新自由主義」の「しん」】『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦〜とべとべ手巻き寿司〜』の感想!【「安倍晋三」の「しん」】

 そこそこおもしろかった!

 しんちゃんの顔は妙な造形をしていて、これを3DCGにしたらどうなるのかと思っていたが、まあそんなに変ではなかった。また普段のアニメでしんちゃんは殆どというか全く正面を向かない。これも3D向きでない特徴だが、本作ではあまり正面から映さないようにしているっぽかった。あと口に奥行きがなくて立体の顔に赤い紙を貼り付けたみたいになっていたおもろかった。

 非モテかつフリーター(?)かつドルオタの弱者男性が主人公で、そいつとしんちゃんがたまたま超能力を得て戦うという話。この男がたまたま超能力を得て万能感に浸りながら街を破壊する様は『AKIRA』の鉄雄を思い出した。なんか髪型も似ていた。

しかし鉄雄は若さゆえの行き場のないエネルギーという感じだったのが本作ではもうちょっと歳がいった人間の社会への明確な反感が元にあり、現代的かもしれない。

 で、その破壊シーンとか、後半のカンタムロボを操縦するしんちゃんと巨大化した弱男との戦いとかはなかなか良かった。CGで作った甲斐があると思った。いわゆる「板野サーカス」調の映像もあって見応えがあった。CGは動きが軽くなるのが問題だと常々思っているけれど、カンタムは重そうに見えて良かった。あと操縦席に座るでなく機体の外側のスペースに立って指示する様は『やぶにらみの暴君』方式だなあと思った。その後の更に変身した弱男のデザインもウルトラ怪獣の凝ったやつみたいでたいへん良かった。

 しかし話が偶然の連続みたいなのはどうかと思った。弱男とひろしがたまたま前に会っていたり、武器がたまたましんちゃんと弱男が元から好きだったカンタムだったり、予言者がたまたま弱男を集めていて石が当ったのも同じく弱男だったり。まあいいけど。

 あの深キョンの曲はどういうチョイスだったのだろう。北野武監督の『Dolls』という映画で深キョンがアイドルの役をやっててあの歌を歌っていたが、そのイメージだろうか。あんまり関係ないか。アイドルは本作ではたいしたテーマではないし。

 空気階段がゲスト声優らしからぬ自然な演技で驚いてしまった。

 ポリ・コレのあおりというか、ぞうさんネタとオカマネタを封印された結果、ギャグがおしりとかオナラとかウンコとか肛門まわりに偏ってしまっている印象を受けた。あと方言のネタはコント台本ぽすぎてクレしんらしくないように感じた。

 ひろしは現代の感覚からすると勝ち組だとよく言われる。序盤で弱男がひろしにムカついてるのもそういう最近の論調を反映しているのかと思い、おもしろかった。しかし最終的にはひろしこそが日本人男性の理想でありひろしみたいになれるように頑張れ、という感じで、それでええんかと思った。というか私みたいな本物の弱男が観にくるとは制作側も思っていなかったのかも。たしかに客はファミリーとかティーンが多かった。ごめんね。

 しかしカンタムの戦闘は良かったが、その後なんか精神論みたいなパートに入っていき、つまらなくなった。あれは子どもさんたちもつまらなかったんじゃなかろうか。そんでその最終的な答えも先述の通り「頑張れ」で、なんか釈然としない。これは高畑勲先生が批判していた「良い目的をもっていれば良い結果が出る」タイプの短絡的な話にも思えた。私みたいに家庭円満でイジメられたこともないのにダメな人生を歩む人間もいるしなあ。

 この国の未来が暗くないとか言うな、みたいなテーマだったが、まあ個人が頑張ってもどうにもならん部分もあるしね。子どもが観にきてるのに映画内で誰向けかもよくわからん説教をかますような大人にこそ、なんか暗いものを見てしまう私であった。

 

 そういえば一昨年の映画は観たのに去年のは観てなかったなあ。なんでだろう。

cut-elimination.hatenablog.com