こちら。江口聡(2023)「性的モノ化と少女のセクシュアル化:「萌え絵」騒動を考えるための予備作業」『現代社会研究科論集』(京都女子大学)。タイトルからしておもしろそうなテーマである。徒然なるままに思ったことを書きます。
前にはこんなのも書いてます。
cut-elimination.hatenablog.com
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この度の新しい論文では江口先生はユッテン先生の論文も批判的に取り上げている。ユッテン先生は(性的)モノ化を「社会的意味の押し付け」と捉えてポルノ規制にまで言及していた。江口先生は、フィクションの、更に今の日本でいうと二次元のキャラクターがどうしようと押しつけにはならんのではないかと批判している。「促進」まではしていないしできないのではないか、と。そして促進しているかどうかは経験的に調べるべきではないか、とか。
ついでに。私が前にユッテン先生のを読んで書いたのは、質の低い漫画なんかではユッテン先生が指摘するような差別的な意味を押し付けていそうなものがあるが、批評によって改善したい、という事だった。それと二次元の女性キャラはもっと多様だとか、ユッテン先生の分析とは違って性への積極性みたいなのが好まれていないか、とか、ヘテロ男性のステレオタイプだけでなく、ティーンズラブとかジャニーズとか腐妄想みたいなのもある、とか。
江口先生の論文の後半では、セクシュアル化なる概念が取り上げられてる。セクシュアル化の意味は時代によってまちまちで定義が難しいようだが、わからんでもない。私も先の記事で書いたインスタのエロ自撮りやTikTokのエロダンスは「自己モノ化」であり、社会のセクシュアル化の一つの現れのようだ。この自己モノ化のネガティブな側面がアメリカで問題視され研究されたらしい。そして批判もあるとか。私も書いたが、TikTokで踊っている人は楽しそうで、決してネガティブなばかりのものではないのだろう。江口先生は萌え絵作者に女性が多いらしいという点から、萌え絵にもにもそうした(自らの)性を楽しむ感じがあるかもと示唆してる。私の推し女性エロ漫画家の亜美寿真(つぐみすずま)先生がVTuberとして活動していて、ゲーム配信が多いがエロ漫画とか性についてもたまに話しているので、表現問題研究者はこういうのも見るべき! しかしちゃんとR-18でやっている人は萌え絵批判の標的ではないかもしれない。
まだまだ議論は始まったばかりである。
「性的消費」というトゥイッターでよく見る語の意味の不明瞭さにも触れられていた。しかもこの語の流行の発端は東浩紀『動物かするポストモダン』ではないか、とも書かれている。もしかしたらそうかも。ただし取り上げられている「物語消費」の語は大塚英志先生の本だが。大塚先生やあずまんはボードリヤールを援用しているので、そのへんの消費社会論がフェミニズム論にも入ってきたのだろう。
それと経験的に調べるのを重視するならば、やはりTL(ティーンズラブ)はもっと研究されるべきである! 女性向けエロ漫画の実態は未だ解明されていない。