曇りなき眼で見定めブログ

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藤津亮太『「アニメ評論家」宣言』という本をだいたい読みました

 たいへん良い本です。藤津亮太『増補改訂版「アニメ評論家」宣言』ちくま文庫。まだ見ていないアニメの評論は読んでいない。(見ていない作品の批評を読むのも意味はあると思うけどまあまあ。作品を見てからのお楽しみにとっておく。)

 以前にこんな記事を書いた。

cut-elimination.hatenablog.com

藤津先生はここで挙げたダメなアニメ批評に引っかかる事は殆ど書いていない。唯一、批評っぽくない文章が幾つかあったが、まあ私の「批評」観が狭すぎるのもアカンので良い。特に、アニメをアニメとして、アニメや作品の内在的価値を論じているのが良い。ブンガクとか政治に引きつけたりせず。けっこう演出論に寄っていて、作画が好きな私にはやや不満もあるけど、まあそれはよい。

 特に良かったのは、エヴァの作画とか演出の密度を論じていた文章。追記でエヴァの技術的側面を論じているものが少ないので書いたという感じに述べていた。これはありがたい。アニメ批評界はエヴァ論みたいなオーソドックスな批評こそ不足しているように思う。世の中応用編みたいなアニメ批評ばかりなので。(本書はアムロとシャアの名前を論じた文章なんかは応用編の「藝」的な批評だった。)

 出崎演出や押井演出の情報量の粗密を論じたやつなんかは、けっこう本格的な研究に発展できそうで面白かった。

 歴史がちゃんと資料に基いて論じられているのも良い。こういう基本さえアニメ批評では軽んじられがちである(他人のこと言えないけど…)。

 アニメは監督だけで作るものではないので監督の名前ばかり挙げないという藤津先生の規律にも賛成!

 辛口評論をできるだけしない、という風に述べていた。アニメの向上とか読者としての観客のためにならないということなので。しかし私は、批評は批評として面白いものなので、作品とともに文化を築くべきと思う。アニメを語る言葉や基準を適切に設けるという意味で。なので、辛口評論も、それ自体が面白ければ良いと思う。藤津先生は辛口評論の役割として「ダメな作品を淘汰する」というのを想定しているが、私は、辛口評論のお陰で見たくなる事もあると思う。私が辛口評論をする時、別にその作品を見ないで欲しい訳ではないのだ!