最近「物語」シリーズというのを見ている。ほぼ見たことがなかった。奇怪な演出や画面構成や台詞回しが頻出するが、キャラクターデザインがかなり良い点にも注目である。萌えとリアルのバランスが良い。
どういう順番に見ていくものか迷ったけれど、話がわからなくならぬよう、後になってアニメが作られた「傷物語」を早めに見た。これはなかなか良かった。
鉄血編
テレビシリーズよりもキャラクターの陰影や造形、シワなんかがリアルである。これはなかなか良い。エロティック表現が更に生々しくなっている。それでいて「クソリアル」でなく可愛さもある。幼児化したキスショットなど仕草も含めて可愛い。羽川の猫口も良い。
それと赤を基調とした色合いになっているのも「血」というモチーフをよく表現している。加えて、何故か巨大建築物が映る点とか、実写を取り込んでいる点なども面白い。こうした点からとにかく画面を面白いものにしようという意思が感じられる。
更に美的な長所として、赤と白のコントラストの美しさがある。日の丸旗もシリーズを通してよく映ったりする。このモチーフの一貫性はアートである。前半の山場のキスショットとの邂逅シーンなど、コントラストの美しさが極まっている。暦が焦るシーンはちょっと焦りすぎでないかと思ったが。
また黒も重要なモチーフである。後半の山場である吸血鬼ハンターとの邂逅シーンは、赤みがかった色と黒とのコントラストと工業地帯というロケーションが、実相寺特撮とか庵野作品みたいでキマッている。
テレビシリーズもそうだったが、主要キャラクター以外まったく人間が出てこないのはどういうわけだろう? なんか怖いね。
走るシーンの作画は良いが、良すぎるような気もする。作品のスケールと合っていないような。これは難しい問題だが。
熱血編
いろんなオマージュがある本作だが、『巨人の星』のオープニングのオマージュは面白かった。重いコンダラも映っていた。
痛そうなシーンが多くて「ヒェッ」となってしまった。でもこういう耽美的なエログロアニメもあってよいなあと思う。ちょっとエロが露骨だが(私は「露骨なエロ」には厳しい)。
戦闘シーンなど台詞も殆どなく、野球ボールを投げたりとかシュールで、最近のアートアニメよりアートアニメ的である(最近のアートアニメをそんなに見ていないが)。
冷血編
シリーズ全体を通して妙に1シーケンスが長い。西尾維新先生の会話の面白さを尊重しているのだろうが、気になりだすと気になる。特に本作のパイオツのくだりは長い。あと羽川の乳袋がなかなか気持ち悪い。
キスショットが人を喰っている所を見て暦は随分と驚いていたが、そんなに驚くようなことではないような。
競技場での戦闘シーンはワンダーに溢れていて良い。熱血編よりも更にシュールだが、斜に構えてリアルを放棄したという感じでもなく、キャラクターの必死さが伝わってくる。
最後はキスショットを死なせてやればよかったような気がしてならない。永遠に生きるのはキツいから、やはり良き所で死なないといかんのではないか。
まとめ
ポップ系エログロアニメの傑作だと思います。