↓Wikipediaにリンクがあったのだが公式のやつかどうかは判らない。4K修復版なのでめちゃくちゃ画質が良い。Amazonプライムにもあったが画質が悪くてあかんかった。
↓『羅小黒戦記』がプロパガンダだとかいう批評に反論したついでに、アニメとプロパガンダの関係についてちゃんと調べようと思った次第。
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『桃太郎 海の神兵』は太平洋戦争下で作られ1945年4月に公開された戦意高揚プロパガンダアニメーション映画である。日本初の長編アニメーションとされる。
戦意高揚だけでなく、南方で現地人と思われる動物たちに日本語を教えるシーンなんかもある。八紘一宇、大東亜共栄圏である。キャラクターは指揮官の桃太郎以外すべて動物なのだが、日本人キャラは擬人化された動物であるのに対し、南方人キャラは野生動物みたいに描かれていておかしい。これが八紘一宇の現実なのだろう。
『白蛇伝』もそうだったが、もっと昔の本作も、ストーリーテリングというものが未発達なのか、話があちこちに飛ぶ感じがある。また、何故そのシーンにそんなに尺を割くんだ? というのが多かったり。しかし作画に関しては特におかしい点とかもない。途中で切り絵風になるところなんかもおもしろい。
ミュージカル的なシーンなど牧歌的なシーンがけっこう大半を占める作品である。津堅信之『日本アニメ史』によると、露骨な戦意高揚短編がたくさん制作されていた当時にあって本作は「くもとりゅうりっぷ」とともに異色だったらしい。
しかし一転してラスト15分ほどでパラシュート部隊の戦闘が描かれる。これにはえもいわれぬ生々しさがある。動物キャラたちの牧歌的なシーンが続いた反動もあろうし、てるてる坊主と人形が意味ありげにオーバーラップする演出やパッパと開く白いパラシュートのエモーショナルな感触も貢献していよう。なにより、おそらく当時のリアルな戦闘に近いであろう銃剣や短剣で戦車につっこむシーンなどが生々しさを高めている。『装甲騎兵ボトムズ』がリアルだと言われるが、人間や銃器の描き方のリアリティではなく、本当に現実にあった事を描いたのだというリアリティがある。
『羅小黒戦記』について、「見ても共産党のイデオロギーが素晴しいとは思えない」みたいな事を書いたが、本作も見たところで戦争に行きたいとは思わなかった。まあ兵隊さんは頑張ってるんだなあという感じはある。八紘一宇は良いかもしれない。しかし本作は公開後すぐに敗戦となったため、たいした効果を挙げなかった。