たいへん面白かった!
流行りのマルチバースものというやつで、SFに疎い私には難しい話だったのだが、アクションとかビジュアルが良かったのでいい。生命の進化とかそういう壮大なテーマにも挑んでいて、私はけっこう好き。
色んなスキルをインストールして闘うみたいなのは漫画とかニチアサであったような気がするが、それをなんの変哲もないオバサンがやるというのが鮮烈で面白い。監査官のオバサンがバーサーカー化するのも面白かった。最初の大きなアクションはジャッキー・チェンとシソンヌじろうを足して2で割ったようなやはりなんの変哲もない見た目の夫(並行世界の)がポーチをヌンチャクみたいにして闘うシーンだったが、こういう突然はじまる感じも私は好き。
ジョブ・トゥパキのファッションと魔術的な能力描写がトリガーとかサイエンスSARUとか今敏のアニメみたいでかっこよかった。こういう奇想みたいなのは考えて映像で実現するのが大変だろうがよく頑張っている。途中でMISIAみたいになるのも素敵である。
なんの変哲もないオバサンとオジサンが並行世界では映画スターになっていて、メイクとファッションでめちゃくちゃかっこよく見えるのも素敵である。
感動的なシーンなのに(手がソーセージなので)足で涙を拭ったりとかお爺さんがハリボテみたいなマシンを装着していたりとか、そういう奇妙なズレがおかしくて、しかも極めて映画的だと思った。
セクシュアル・マイノリティみたいなテーマはアメリカで流行ってるらしい。あんまり日本ではこういう感じで取り上げられないので良いんでないかと思った。アメリカの映画やドラマをよく見ている人にはお馴染みのテーマなのかもしれないが私には新鮮だった。
ユニバースからユニバースへのジャンプがいわゆる同ポジを使った編集で、しかも一瞬アニメになったりとか、これも極めて現代映画的で良いと思った。ただちょっと多用しすぎかもしれない。
技法を多用しすぎというのもあってか、全体的に長く感じた。最後の方で家族愛みたいなのを強調するのは、まあ良い事だけど蛇足気味にも感じた。
あの眼のシールが何を表しているのかも解らなかった…。
しかし全体的に非常に面白く、アカデミー賞も納得である。
石になるところが特に、珍妙さと感動がミックスされていてよかった。
あと監査官が自慢していたトロフィーがなんか卑猥なオモチャに見えるなあと思っていたらそれが伏線だったのにも驚いた!
哲学的には遠い可能世界と近い可能世界を論じたデイヴィッド・ルイスを思い出した。
あと別の世界にも自分がいるという点はルイスと共にクリプキの貫世界同一性の議論のようでもある。