曇りなき眼で見定めブログ

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伝説のアニメーション『やぶにらみの暴君』を見よう!

 ポール・グリモー監督のアニメーション映画『やぶにらみの暴君』を初めて見たのだがめちゃくちゃ面白かった!

 同作は『王と鳥』として改作されてオリジナル版は回収されてソフト化もされていないとかで、見る手段がないとされている。

しかし実は某動画サイトで字幕付きで見る事ができる(音声は英語だが)。まあ倫理的にあまり良くないかもしれないのでリンクは貼らないでおく。検索してみよう!

 絵の中の羊飼いの娘と煙突掃除人が暴君から逃げて脱出するという幻想的なストーリーではあるが、ガジェットはSF的でもあり、アニメーションならではの独自の世界に到達していると思う。この変幻自在さが多くの人々をしてアニメーションを志さしめたのだろう。

 画質が悪かったので絵の細部までは見えなかったが、しかしデザインはシンプルで見やすかった。王と羊飼いの娘と煙突掃除人といった主要人物と対比されるように個性を欠いた城の役人たちのデザインは象徴的である。兎に角デザインや舞台装置が暗喩的で詩的なのである。城の構造と様々なカラクリも(後述するように高畑勲が述べていたが)権力の冷たさを象徴的に描いている。これが素晴しい。高さを意識させる三次元的なレイアウトも逆説的に閉鎖的な印象を与える。城の壁の色も冷たそうである。

 巨大ロボットアニメの先駆的な作品でもあるらしい。このロボットのマヌケだが恐ろしいデザインも素晴しい。最後にロボットが城を破壊する時に初めて城の全景が映る。これがハリボテ化した権力の虚しさを見事に表現している。

 高畑勲先生は『やぶにらみの暴君』に衝撃を受けてアニメーションを志したと言う。改作された『王と鳥』は『やぶにらみの暴君』程は良くないと語っていた、確か。↓『漫画映画の志』という本で両作の違いを論じているらしいのだけどまだ読んでいない。

宮崎駿も『やぶにらみの暴君』には影響を受けたらしい。『カリオストロの城』の物語や舞台設定は同作とよく似ている。

 高畑先生はスイッチを押すと床が抜ける演出に衝撃を受けたらしい。アニメーションは絵と演出で思想を表現できると気付いたのだとか言っていたと思う。それと確か空間的な表現についても。そのうち調べます。『ハイジ』の最初のシーンなんかはカゴの中の鶏と高い壁に囲まれたハイジを対比的に描いていてグリモー的だと思う。

 実は『王と鳥』はまだ見た事がない…。こちらは正規の手段で見る事ができる。またいずれ。