曇りなき眼で見定めブログ

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ユーリイ・ノルシテインのアニメーションを見よう

 アニメーションの「神様」ユーリイ・ノルシテインのBDを買って見た。だいたい見たことあったけど。『25日・最初の日』『ケルジェネツの戦い』『キツネとウサギ』『アオサギとツル』『霧の中のハリネズミ』『話の話』が収録されている。

 いろいろとコメントをば。

 ノルシテインのアニメーションは切り絵で作っていて、関節部分と目と口ぐらいしか動かない。なのでディズニーや日本のリアル系アニメのような緻密な動きは存在しないが、それでも何か動きの繊細な部分を捉えているようでもある。『話の話』で童子が青リンゴを食べている手と口・頬の動きなんて実にリアルである。

 また作画による動きよりも編集の妙によってダイナミズムを生むというのは日本の特にテレビアニメの特徴だが、ノルシテインの作品も編集の大胆さは大きい。というよりエイゼンシテインに影響を受けたモンタージュというやつである。『25日・最初の日』や『ケルジェネツの戦い』に顕著である。動きや時間や物語を表現する編集というよりはもっと観念と観念の対立のような抽象的な次元にある。こういうのは日本の商業アニメではまず見られない。『エヴァ』とかぐらいか。

 『アオサギとツル』は北斎の版画など日本画に影響を受けている。雨のシーンの静謐な美しさは素晴しく、新海誠作品のリアリティとも違う抽象性が日本的である。新海監督とか『鬼滅の刃』とか、モチーフやデザインに日本的なものを使ってくるが、ノルシテインの方が深く日本藝術を理解しているように感じる。

 『霧の中のハリネズミ』と『話の話』はアニメーション史上に残る傑作である。ここまで「抽象」という言葉を何度か使ってきたが、露骨に具体的な表現をせず想像の余地を大胆に残しているのがこの二作では更に顕著である。「幻想的」とか「夢のよう」とかでなく、幻想や夢そのものを巧みに現出して見せている。

 日本の商業アニメの型に嵌った作りに飽きてきた人は見ましょう。