曇りなき眼で見定めブログ

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【分析】「モーニング娘。の第3期メンバー」は確定記述句か?【哲学】

 明るい未来に就職希望だわ〜。

 

 言語哲学における「確定記述句」というのはラッセルが論文「指示について」で取り上げた概念である。フレーゲも「意味と意義について」で考察している。確定記述句とは何かというと「唯一の対象を指示する言語表現」のことをいう。と思っていたけど、これだと不十分かもしれない。

  モーニング娘。の第3期メンバーは後藤真希ただ一人である*1。ということは「モーニング娘。の第3期メンバー」は確定記述句なのだろうか。なんかちょっと変な感じがするという話である。

 例えばモーニング娘。に詳しくないある人がモーニング娘。の歴史をザッと調べたとする。そしてその人は、第3期メンバーは1999年に加入したと知る。すると

 

 (M3a) モーニング娘。の第3期メンバーは1999年に加入した。

 

という文が真だとわかる。これは

 

 (M3a') ∀x(x はモーニング娘。の第3期メンバーである → x は1999年に加入した) 

 

と翻訳できる。しかし「モーニング娘。の第3期メンバー」が確定記述句だとすると、これは以下のように分析されなばならない。

 

 (M3a'') ∃x(x はモーニング娘。の第3期メンバーである \land x は1999年に加入した \land ∀y(y はモーニング娘。の第3期メンバーである → x = y)) 

 

 しかし(M3a')が特段ヘンな文であるとは思われない。これは

 

 (M2a) モーニング娘。の第2期メンバーは1998年に加入した。

 (M2a') ∀x(x はモーニング娘。の第2期メンバーである → x は1998年に加入した) 

 

 というのと同じ形をしている。第2期メンバーは3人いるので「モーニング娘。の第2期メンバー」は確定記述句ではない。よって(M3a'')のような形にするとそれは偽となる。

 つまるところ問題は、単に条件を満たす対象(外延)が一つだけであるような言語表現は確定記述句といえるのか、ということである。例えば

 

 (ML) モーニング娘。の現リーダーは2011年に加入した。

 

と言ったときの「モーニング娘。の現リーダー」は、譜久村聖という一人の人物を表していると問題なく判断できる。しかし「モーニング娘。の第3期メンバー」は「モーニング娘。の第2期メンバー」と形の上では同じなので、このようにすんなりとは判断できない。けれどもモーニング娘。の歴史に通暁している人からすると「モーニング娘。の第3期メンバー」は後藤真希という一人の人物を表すと判断できる。

 ラッセルは、固有名は確定記述句の省略表現だと主張した。すると「譜久村聖」という固有名は「モーニング娘。の現リーダー」という確定記述句と置き換えられるし、「モーニング娘。の第2期メンバー」は確定記述句ではないので固有名とは結びつかない。問題の「モーニング娘。の第3期メンバー」は「後藤真希」という固有名を置き換えられる確定記述句と考えられるのだが、どうも「モーニング娘。の第3期メンバー」は一人の人物を指示する表現っぽく思えない。

 確定記述句の例として「算術の不完全性の発見者」というのがあって、これは「ゲーデル」という固有名と結びつく。ラッセルの分析の問題点としてクリプキ先生らが挙げるのには、算術の不完全性の発見者ということを知らなくてもゲーデルという固有名を使えるとかそういうのがある*2。しかし、その確定記述句が何を指示するのかだけでなく、それが唯一の対象を指示する表現だということを知るのにも知識が必要になる。

 で、冒頭の定義の何がいけないのかというと、そもそも確定記述句というのは定冠詞が付く単数の名詞のことである。ラッセルは英語で執筆し、フレーゲはドイツ語だったが、英語にもドイツ語にも定冠詞と名詞の数がある。日本語には文法上明確にそういうのがあるわけではない。英語ならば"the member of 3rd generation of Morning Musume"とか"the members of 2nd generation of Morning Musume"とかして単数か複数化を区別できる。"the member of 3rd generation of Morning Musume"と書くと(ML)の"the present leader of Morning Musume"と同じような感じになる。また

 

 (M3b) モーニング娘。の第3期メンバーが「LOVEマシーン」のセンターを担当した。

 

というのは

 

 (M3b') ∃x(x はモーニング娘。の第3期メンバーである \land x は「LOVEマシーン」のセンターを担当した)

 

のようであるが実際には(?)

 

 (M3b'') ∃x(x はモーニング娘。の第3期メンバーである \land x は「LOVEマシーン」のセンターを担当した \land ∀y(y はモーニング娘。の第3期メンバーである → x = y))

 

となるべきである。これらの区別は"a member of 3rd generation of Morning Musume"と"the member of 3rd generation of Morning Musume"という不定冠詞と定冠詞の使い分けをすればよい。英語には日本語のような苦悩がないということになる。

 つまり「モーニング娘。の第3期メンバー」が確定記述句っぽく感じられないのは日本語に定冠詞と数がないからというのが大きい、かもしれない。言語相対論ではないけれど、言語哲学は言語によって異なる様相を呈するのかもしれない。けどそもそもフレーゲラッセルらはそういった自然言語の曖昧性を取り除くために論理言語を使い出したのだから、こうして分析できたのならまあよいのかもしれない*3飯田隆先生は言語哲学の立場から日本語の文法を分析するという研究をやっておられるので、今回のモヤッとの解消の参考になるかもしれない。読まなきゃ。

 

追記:本記事は『言語哲学大全Ⅰ』を参照せずに書きました。のちに参照して気づいたことをこちらに書いています。→「モーニング娘。の第3期メンバー」は確定記述句か? 問題の続報 - 曇りなき眼で見定めブログ

 

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LOVEマシーン

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 こうやって書くと私がモーニング娘。のファンみたいだが、別にそうではなく*4、単にゴマキがただ一人の3期メンバーというのを知って思いついただけである。けれど今回モーニング娘。の歴史を調べて思ったのが、なんかMTGの歴史と似た雰囲気がある。LOVEマシーンで社会現象を巻き起こした頃のメンバーがパワー9みたいに神々しく思える。さしずめゴマキはBlack Lotusであろう。

*1:他にも加入者がただ一人の期はある。

*2:飯田隆言語哲学大全Ⅲ』を参照しました。

*3:急に「かもしれない」が増えた。

*4:もちろん嫌いじゃあないですよ。