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河野真太郎『増補 戦う姫、働く少女』徹底批判シリーズその10 アイデンティティ管理とは何か?

 ↓これの続き

cut-elimination.hatenablog.com

 河野真太郎『増補 戦う姫、働く少女』

 今回はシェリル・サンドバーグさんについての続きでフェイスブックについて。

 3章。『魔女の宅急便』論の準備として「アイデンティティの管理」と「アイデンティティの労働」というわかるようでわからない言葉が論じられる。アイデンティティの労働については次回以降で扱う。今回はアイデンティティの管理について。

 アイデンティティの管理なる概念が最初に出てくるのはこの箇所と思われる。

 さて、フェイスブックの活動とは何であろうか。それはまず、アイデンティティの維持管理である。フェイスブックには、名前や性別(性的指向)、現在の所属だけでなく、タイムライン上に自分が住んできた場所、出身学校、職業などを登録することができ、その情報と、フェイスブック上の友だち関係を元に、フェイスブックは驚くほどの的確さで知り合いである可能性のあるほかの利用者を「お勧め」してくる。

 ここで起きていることは、わたしたちがフェイスブック上に自分のアイデンティティを再構成し、それを維持管理し、さらにほかの人たちとネットワーク化するということである。そしてそのアイデンティティは、つねに「いいね!」と呼ばれるようなものでなければならない。(103−104ページ)

個人の情報を登録するということが何故アイデンティティの維持管理と言い換えられたのか、よくわからない。情報の出し入れを戦略的にやることが推奨されている、というような意味だろうか。しかし後で引用する箇所を読むにそうとも思えない。そしてその個人の情報は「つねに「いいね!」と呼ばれるようなものでなければならない」のだったか。私はフェイスブックを辞めて久しいのでよく覚えていないが。

 フェイスブックの話から進んで、1章で出てきたシェリル・サンドバーグ氏がまた触れられる。今度は著書『リーン・イン』の内容が少し紹介される。

 そしてなんといっても、働く女性、働くだけではなくトップに立つ女性としてのサンドバーグの悩みは、働きつつ、トップに立ちつつ、いかにして「いいね!」と思われるか、ということである。第三章「できる女は嫌われる」は、この問題をあつかう。ジレンマは、伝統的な意味で「いいね!」な女性は出世ができないということだ。女性的に「いいね!」であろうとすると、従属的になってしまうのだから。しかし、出世するためには「いいね!」でなければならない。ひどいジレンマだ。『リーン・イン』は基本的に、女性をめぐる制度の問題ではなく、そのような個人のジレンマをめぐるサンドバーグの苦闘を描く。そしてその答えは、序章の副題にある「内なる革命」である。つまり、女性をめぐる外側の制度の革命ではなく、内面、アイデンティティの革命だ。(105ページ)

本章は「いいね!」という言葉をやたらと推すが、サンドバーグ氏の著書でも推しているのだろうか。また「内面」をアイデンティティと言い換えるのも河野先生の解釈なんじゃなかろうか。先の引用だとアイデンティティは必ずしも内面ではないと思うので整合性が怪しい。また前回指摘したように、成功者の責任を過大に捉え、しかもそれを明言せずに匂わせている感じがある。

 そして以下のように続く。

 ここまで述べたことを言いかえれば、サンドバーグの本は、アイデンティティ管理の成功譚ということになる。そして、フェイスブックはまさに、サンドバーグが成功したアイデンティティ管理とそれにもとづくネットワークをモデルにしているかのように見える(逆で、この本が単にフェイスブックの宣伝をしているだけかもしれないが)。

 というわけで、サンドバーグの労働は、ポストフォーディズム的な労働、アイデンティティの労働として表象される。そしてフェイスブックに参加するわたしたちのアイデンティティ管理もまた、そのような意味での労働なのである。(105−106ページ)

アイデンティティ管理の意味は結局わからない。サンドバーグ氏はフェイスブックの開発者ではないので、サンドバーグ氏の人生をモデル化しているというのはどうなのだろう。アイデンティティの労働というのは本書のこの時点では説明がなく、これもよくわからない(次回以降でさらに論じる)。私はフェイスブックをやっていないので、それがどういう意味での労働なのかもわからない。あと「表象される」というのは誰が表象しているのだろう。「表象」のような謎の言葉が使われるときは、何か議論をごまかしている場合が多い。

 などなど

 

 追記:↓続きはこちら

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