曇りなき眼で見定めブログ

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河野真太郎『増補 戦う姫、働く少女』徹底批判シリーズその9 シェリル・サンドバーグさんに何か恨みでもあるのか?

 ↓これの続き

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 河野真太郎『増補 戦う姫、働く少女』

 『魔女の宅急便』論について続けようかと思ったが、その前にシェリル・サンドバーグ氏について。河野先生はサンドバーグ氏を批判したいようなのだが批判になっていない、というか批判しそうで批判しない。

 サンドバーグ氏はFacebook社のCOOだった人である。河野先生はサンドバーグ氏をポストフェミニストとして取り上げて、批判(?)している。しかし実際のところ批判したいのかどうかよくわからない。サンドバーグ氏の行動や言葉を具体的に取り上げて批判しているわけではない。ポストフェミニストというのが本書ではネガティヴな語として使われているように思えるが、それもあまり明確ではないため、ポストフェミニストの代表としてズバリと批判しているわけでもない。

 出世してお金を稼いでいる白人女性がなんとなく気に食わない、とかそういうわけなのだろうか。よくわからないままサンドバーグ氏の名前が何度も出てきて批判する雰囲気だけ文章から匂わされて進んでいく。お金を稼ぐだけなら何も悪くないと思うのだが。貧困層へ還元しないのが良くないと読み取れそうでもあるが、寄付とかしてるんじゃないかと思うし、金持ちにどの程度の貧困層への責任や義務があるかというのは難しい問題で、その点は論じられていないと思う。単に河野先生はキャリア白人女性に恨みでもあるのか? と思ってしまう。

 批判なのなどうなのかわからない箇所を一つ引用しておく。

 だとすると、サンドバーグとは何者であろうか。それは、賃金格差のもとで搾取を受ける女性労働者を隠すための遮蔽幕である。もしくはこういうことだ。あなたが現在、労働の内容に見合わぬ低賃金で働く女性であるとして、それはあなたがグローバル人材であることを証明できていないからである。サンドバーグに成れていないからである。この論理はグローバルな「ブラック企業」の論理に似ている。いまあなたが名ばかり管理職について過労死直前まで働くことを強いられているとして、それはあなたがまだグローバルな人材として開花していないからである。いつかあなたはグローバル人材として覚醒するかもしれない。または、しないかもしれない。それはわからないが、ともかくも当面は一日二十四時間週七日間働きなさい。(39ページ)

この段落は本書中でもかなり上位に入る意味不明さだと思う。論理展開というものがなく、一文目と最後の文が何も関係なくなってしまっている。「サンドバーグとは何者であろうか」とあるがサンドバーグサンドバーグだろう。「賃金格差のもとで搾取を受ける女性労働者を隠すための遮蔽幕である」というのはまるでサンドバーグ氏が闇の勢力から遣わされたかのようであるが、そのような陰謀論はやめるべきである。その後のグローバル人材やブラック企業云々というのも謎であるが、「ともかくも当面は一日二十四時間週七日間働きなさい」というのはいったい誰が言っているのか。

 サンドバーグ氏が登場する箇所はこのような調子で議論が行方不明になる。サンドバーグ氏が気の毒である。

 

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