曇りなき眼で見定めブログ

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清水晶子『フェミニズムってなんですか?』は良い本だ!

 みんな読もう!

清水晶子『フェミニズムってなんですか?』文春新書。『VOGUE』のウェブサイトで連載されたらしい。

 いろいろフェミニズムについて書いている割に無知な私なので勉強になった。特に欧米のフェミニズム運動の歴史が分る。

 全体的に「フェミニズムは論者や立場によって様々」という姿勢が貫かれていて良かった。寛容なフェミニズムである。

 著者は英文学者なので、英語圏の映画やドラマをフェミニズム的観点から批評した章が多かった。私としては日本のアニメも取り上げて欲しい所だけどまあまあまあ。ガールパワーものとしては「セーラームーン」「プリキュア」の両シリーズ、女性の連帯的な作品としては『少女革命ウテナ』がオススメです。

 それと「家父長制」という言葉の使い方が気になった。これが気になるのはフェミニズム文献を読んでいるとよくある。清水先生は「女性の再生産能力とセクシュアリティを男性支配の存続のために利用する仕組み」と書いている(102ページ)。しかし例えばウィキペディアでは「家長権(家族と家族員に対する統率権)が、女性である家母長にではなく 男性たる家父長に集中している家族の形態」と書いてあって私もこの意味で理解していた。

ja.wikipedia.org

つまりフェミニストのいう「家父長制」はけっこう特殊な意味で、本当にみんな同じ意味で使っているのか? という疑問があるのである。

 全体的に統計データが少ないので具体性が乏しい感じはある。まあそれは良いのだけれど、教育を論じた所なんかはもう少し社会学的な議論を参照しても良かったのではないかと。参考文献とかは載っていない。家父長制は国家が女性のセクシュアリティを管理する事だ、という議論も具体性が乏しく感じた。

 また冒頭で「寛容」と書いたが、トランス女性を批判するジェンダー・クリティカルな思想はかなり非難していた。ただこれは作家の李琴峰先生との対談で振られた話なのでちょっと偏ったのかもしれない。雑誌『現代思想』のフェミニズム特集で千田有紀先生がトランスフォビックな事を書いた所とても叩かれたらしく、これには清水先生も関わっているようなのだが私はまだよく知らない。こんど読みます。

 私としては中絶がけっこう気になっている。清水先生は女性の産む・産まないの権利についてはけっこう書いているのだが、問題は胎児に命があると言えるかどうかだと思う。それと障害のあると判った子は中絶して良いという案に障害者が抗議したという歴史も紹介されているのだけれど、ロングフル・ライフというのもあって、生れたくなかったという人もいるのである。要するに母体だけでなく胎児側の気持ち・便益・権利も考えるべきでは、と反出生主義に関心がある私は思った。と思っていたら対談が載っている李先生は胎児の同意がなければ産めない世界という設定の小説を書いているらしい。これは読んでみたい。

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