曇りなき眼で見定めブログ

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「THE FIRST SLAM DUNK」を観た!(天才井上!)

 めちゃ良かった!

 私はスラムダンクの原作はだいぶ前に読んだことがあるがアニメはほぼ見ていない。なんか声優が替るとかで叩かれていたけど私は別に思い入れがないのでなんとも思わない。まあ私も碇シンジくんの声優が替ったりしたら嫌だから気持ちは分る。漫画はおもしろすぎて一気読みした記憶がある。その爽快な読後感ゆえあんまり読み返していないという事態に陥ったが。

 で、映画なのだけれど、井上雄彦先生は天才ではないかと思った。漫画家として大天才であるのは間違いないが、映画脚本や映像制作の才能もある。

 2年ほど前に見た「えんとつ町のプペル」は漫才師・絵本作家としては成功しているNISHINOさんの脚本だったが酷いもので、やはり脚本のプロがやった方が良いのだろうなあと思ったのだが、井上先生はそんなことなかった。というか最近の漫画原作のしょうもないアニメ映画より遥かに良い。原作者自身がやっているからか、というかやはり井上先生はストーリーメーカーとして偉大であるのだなあ。原作終盤の山王工業戦に過去の回想と本作オリジナルの宮城リョータの知られざる過去を見事に纏めている。一試合の中に回想が混ざっていく構成にくどさや無理がなく(感じる人は感じるだろうが)、しかも原作の名言もちゃんと入っている。原作では不思議なほどキャラクターの家族とか過去が描かれなかったものだが、(花道じゃなくてリョータだけど)そこを掘り下げたのはファンは嬉しいんでないか。

 映像はフル3DCGかと思っていたが、それは試合の場面だけで、手描き2Dもけっこうあった。クレジットを見たら井上俊之先生とかも参加している(マルチだなあ)。CG部分はロトスコープだろう。このCGの彩色が井上雄彦先生自身の水彩とよく似ていて、これがなかなかおもしろかった。これも原作ファンは嬉しいでしょう。

 で、リョータやゴリや三井の回想を除くと本作は一試合を克明に描くことに終始している。私はバスケの試合を殆ど見たことがないが、それでも井上先生のバスケへの理解の深さのようなものは感じる。まず、一対一のプレーの連続という風にあまり見えない。常に5人と5人の動きが連動しているように感じられる。また、所謂試合の「流れ」のようなものが見えてくる。これは試合構成が上手いのかもしれないが、いずれにせよ「連続で得点を決められてしまった…このままズルズルいくのでは?」みたいな緊張感が漲っている。

 映像作品として無駄があまりないのも良い。同じジャンプ原作の「鬼滅の刃 無限列車編」「呪術廻戦0」「ONE PIECE FILM RED」にあった「愚かさ」「鈍さ」らしきものがない。蓮實重彦大先生なんかはよく映画に対して「運動神経」があるとかないとか言うが、井上先生は運動神経が良いと思う。花道と流川が言い合うところとかがそうだが、僅かに言葉が被ったりするのだが、それはセリフの内容を観客に情報のようにインプットすることよりも映像としてのリズムを優先させているのではないか。そうしたリズムが全編に充溢しているためにセリフが消えて音楽のみになるシーンも上手く嵌っていると感じる。あとリョータが秘密基地に行くところでは、感情をモノローグにせずモンタージュで表現していて良かった。観客を愚かと思っていないから出来る演出である。

 オープニング映像で湘北と山王のメンバーが入場してくるんだが、ここが良い。私の思う本作の最大の魅力はここである。前編に渡ってキャラクターの立ち姿、歩き姿がかっこいい。ちょっと肩をイカらせつつ顔は涼しい。みんな良い感じにとんがっている。やきうなんかと違ってダサくない。バスケというスポーツをやっているが故の筋肉の付き方、立ち居振る舞いが上手く絵になっていると感じた。スラムダンク原作の魅力もそういうところにあった気がする。それがそのまま動いた感じ。ビブスで汗を拭いたりとかそういう動作がいかにも狙った演出と感じられず前述のリズムの中で自然に挿入されているのもカッコいい(最近見ている「チェンソーマン」はこの意味での自然さがなく、監督の運動神経の悪さを感じる)。

 すずとじよりも遥かに良かった。