おもしろいのかおもしろくないのかよくわからないがとにかく怪作だった!
レイトショーで鑑賞。観客はまばら。
怪作というのは話の異様さゆえである。原作は未読なのだがまさかこんな陰鬱な話とは…。アイドルの負の面をそこそこ執拗に描いている。作者の高山一実さんは乃木坂46の元メンバーである。私は一時期乃木坂とバナナマンの番組をよく見ていて、高山さんは明るい人という印象だったので、こんな話を書いてるとはと驚いた。人間は振り子である。
何が異様って主人公が不気味なのである。他人を自分のアイドル活動に巻き込んでおいてケロリとしている。そしたら他のメンバーの子が「アイドルはもうやりたくない」となる。誰もがアイドルになりたいわけじゃないのであって、ハッキリ言って当然である。なのに主人公にはそれがわからない。なんだコイツは! と思った。サイコである。
その不気味さを脚本と演出が引き立てている。当ブログは、現代アニメの「内言」の多さをたびたび批判している。しかるに本作には内言がほとんどない。それどころか内面を観客に伝えるような演出も少ない。キャラクターが内面を持っていないかのようなのである。サイコどころかもはやゾンビだ。なのに主人公は行動力だけは人一倍強く、そのアンバランスさが不気味である。性格が悪いとかそういう問題ではない。性格がないのである。原作だとどうなっているのだろう。小説で内面を描かないというのはなさそうなので、ということはアニメの演出として狙ってそうしているのだろうか。だとしたら監督はすごいかもしれない、と思った。
で、変な作品だな〜と思って観ていたら、後半で主人公が自身のやり方を反省しだす。そして過去の自分はどうだったかと他の子に訊いたりする。となるとやはり主人公の不気味さは狙った演出なのだろう。主人公自身も自分の内面がわかっていなかったのである。監督はやはりすごいんじゃないか。調べた範囲では監督の篠原正寛氏は初監督作品っぽい。要注目である。
終盤の展開はちょっとくさいと思ったが、まあこうでもしておかないと終らないからしょうがない。
絵についても書いておく。キャラクターデザインはかなりかわいい。↓の漫画に似ている。
かわいいせいで、中盤から後半のギスギスした感じがよけいキツい。『パーフェクトブルー』も芸能界の闇を描いているが、あれとは違ったキツさがある。作画は緻密で、フルアニメーション的である。ところどころかなり上手い。椅子がクルッと回るカットなんか良かった。ただしクレジットを見ると作画監督が多すぎである。↓『井上俊之の作画遊蕩』の提言を読んだところなので心配になった。
cut-elimination.hatenablog.com
声についても書いておこう。羊宮妃那氏と上田麗奈氏は声が似すぎである。真ん中の爺さんの声をチェンがやっているのは、電話の声で気づいた。あとなんで他2人の爺さんの声を元乃木坂のお姉ちゃんらにしたんか?