曇りなき眼で見定めブログ

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宇野常寛『ゼロ年代の想像力』徹底批判シリーズその11 アスカに振られるとか振られないとか母性とかレイプとか

 宇野常寛ゼロ年代の想像力

 ↓これの続き

cut-elimination.hatenablog.com

 前回予告した通り、セカイ系論の続き。宇野先生はセカイ系の定義として「「自己を母親的に全承認してくれる異性の所有」を志向する作品」(116ページ)というのも考えているのであった。他にも、更科修一郎という批評家が言う「結末でアスカに振られないエヴァ」(97ページ)というのも出てくる。『エヴァ』は劇場版の結末でアスカに振られるっぽい感じだがゼロ年代セカイ系美少女ゲームは弱い少女を所有するという欲望に忠実でダメだ、と言うふうに論じられている。

 まず言いたいのだが、劇場版『エヴァ』のラストでシンジくんはアスカに振られたのだろうか? あの有名な「気持ち悪い」というセリフをそんな簡単に取ってしまっていいものか。またしても宇野先生は短絡的にご自身の解釈を過信して作品の分析を怠っている。まあ本書が出たずっと後の『シン・エヴァンゲリオン』では、シンジくんはアスカに振られるというか、恋愛関係にならずに決別するという感じで終っているので、予言としては良い感じかもしれない。

 そして「母親的に全承認」というのも、やはり具体的にどの作品のどの部分のことを言っているのかわからない。Keyのゲームのことっぽいが、アニメを見た感じでは母親的ではない。『NHKにようこそ!』のこともちょっと触れられていたが、これもアニメを見た私から見て母親的な全承認と言えるかどうか。言えなくもないかもしれないが、やはりもっと具体的な解釈と分析が欲しい。また前回書いたような事情で、『NHKにようこそ!』は私はセカイ系とは思っていない。

 挙句宇野先生はセカイ系恋愛作品を「レイプ・ファンタジー」という言葉でまとめだす。前述のように弱い少女を所有するという欲望に忠実であるという特徴をこうまとめているのである。なんでやねんと思う。Keyのゲームも『NHK』も他のセカイ系作品も、べつにレイプはしていない。レイプものの作品は他にあるし、ここで言う意味でのセカイ系作品が好きなオタクにレイプ願望があるようにも思えない。なんでこんな乱暴な言葉を使うのだろう。それと、調べたらレイプ・ファンタジーという語はレイプされたがる女性の妄想のことを言うらしい。意味が逆である。

 

 追記:↓続きはこちら

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