↓これの続き!
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↓これを読んでいくシリーズ!
松王政浩「数理モデルをめぐる、最近の科学哲学論争から」
科学哲学者で特に統計学とか数理科学の哲学が専門の松王先生の論考。タイトルの通り。哲学っぽい整理された議論で読みやすかった。フィクション説とかいかにも現代哲学っぽい。そして現代において物凄く意義のある研究に思えて良い(私は役に立つ研究をせねばな〜と常々思っている)。
なのだけれど、私は数理モデルというものをあんまり触ったことがなく実感がない。なので議論の中身について特に何も言えない…。
思ったのが、論理って数理モデルだろうか? 論理体系は人間の推論のモデルとも言えるし、それ以上の規範が入っているとも言えるので、微妙だろう。ジラール先生はカット除去可能性とかチャーチ=ロッサー性みたいな現実の推論とは関係ない論理の超越論的条件なるものを考えているため、数理モデルとはとらえていないと言える。しかし数理モデルにある「抽象」の範囲内だろうか。で、他方で線形論理を量子力学や計算の数理モデルと考えているフシもある。なのでジラール主義者としても微妙なところ。
↓難しそうな本を書いておられる松王先生。
谷村省吾「計算で世界がわかるか」
哲学界隈でも有名な物理学者の谷村先生の論考。論考というか軽いエッセイという感じで、やはり特にコメントすることもない。
一点だけ、谷村先生は「計算の行いそのものは現実世界のなにごとかを直接的に表してはいない」(138ページ)という立場で、これは松王先生が紹介している説のうち表象説というのをまっこうから否定するものではないかと思った。谷村先生と松王先生がお互いの記事を読んでどう考えるか知りたいところ。
田中久美子+峯島宏次「言語と計算 構造と構成の再構築に向けて」
田中先生は『記号と再帰』というおもしろげな本を書いているのだが、積読中。そのうち必ず読みます。峯島先生は慶應の哲学科の論理学の先生で、特に論理学を自然言語処理に応用する研究をしておられる。私も面識がなくはない。
本論は計算によって自然言語を扱ううえでの問題を整理している。たいへんわかりやすく、おもしろかった。論理に基くアプローチと統計に基くアプローチがあって、それらを「構造」と「構成」という言葉で説明している。哲学者や様々な分野の科学者が切磋琢磨してきた歴史も書かれていて勉強になる。
ChatGPTへのdisもあって良かった。
「有限」という語の使い方がちょっと難解だった。
今回のまとめ
どれも読みやすくておもしろかったでごんす。