最近アニメ『あしたのジョー2』を見ている。それで気になったことを書いとく。
第6話のサブタイトルが「吠えろ…、かませ犬」。ジョーは自らのパンチで力石を死なせてしまったトラウマで、相手のテンプルが打てなくなってしまう。日本バンタム級1位原島戦でやっとのことでテンプルを打つが、直後ショックからリング上で嘔吐する。その試合後に紀ちゃん(ジョーのバイト先の店のお嬢さん)がジョーは「かませ犬」みたいだと言うのである。
この「かませ犬」はマンモス西(ジョーの友達でジムの同僚)との会話で発言される。対して西は「かませ…犬?」と返す。どうも西は「かませ犬」という言葉の意味が解っていないようなのである。本作が放送された1980年にはまだメジャーな言葉ではなかったのだろう。
ネット辞書で「かませ犬」を調べると次のように出てくる。
闘犬で、訓練のために若い犬がかみつく相手となる犬。試合から引退した老犬などが使われる。転じて、格闘技などで、引き立て役として対戦させる弱い相手のこと。(weblio辞書)
格闘技で使われることが多い言葉のようだ。有名なのは長州力が藤波辰巳に対して「俺はかませ犬じゃない」と言った事件である。これは1982年10月8日のことらしい。というかたぶん長州がきっかけで広まった言葉じゃないかと思う。
西が「かませ犬」を知らないようなのでその後で紀ちゃんが意味を説明するのだが、これが興味深い。紀ちゃんによると「かませ犬」は「傷だらけになっても闘犬の世界が忘れられず、他の犬の訓練のためだけにただただ噛ませる犬」ということらしい。これは上記の辞書に載っているような「引き立て役として対戦させる弱い相手」というよく知られた意味とは異なっていて、ジョーの状況をもっと直接的に表した譬喩となっている。『あしたのジョー2』は長州の「かませ犬」発言より前なので、まだ今のような「かませ犬」解釈が定着していなかったのだろう。