曇りなき眼で見定めブログ

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「すずめの戸締まり」の感想!

 まあまあおもしろかった!

 私は「言の葉の庭」を公開当時劇場で観た数少ない人間の一人である! 新海監督の映像美は毎度すごいと思うよ。なんだけど、正直言ってちょっともう慣れてきたかもしれない。「言の葉の庭」程の衝撃はもうないような。

 どこかで新海監督が今作は「魔女の宅急便」に影響を受けたというようなことを言っていた。それは表層的なことではないとのことだったが、しかし「ルージュの伝言」がそのまま出てきて笑っちゃったんだよね(笑っちゃったというのは誇張した表現であって実際には笑っていない)。あとはまあ空間の使い方、空を飛んで闘う感じも宮崎駿っぽいところがある。

 というかそれ以上に、「君の名は。」でも思ったが、大災害を「防ぐ」話であって、村上春樹の「かえるくん、東京を救う」という短編を思い出すのである。これは春樹先生が阪神大震災を受けて書いた連作『神の子どもたちはみな踊る』の一編で、阪神大震災後に東京で起こるはずだった大地震を「かえるくん」なる存在が食い止めるという話である*1。みみずくんというのが地震を起こすという設定も似通っている。モチーフが蛙じゃなくて猫なのはまあその方が可愛いしね。新海さんはだいぶ春樹チルドレンだと思うので*2東日本大震災を受けて『神の子どもたちはみな踊る』を読み返し感じ入ったのではないかなあと想像する。だとしたらインタビューとかで言ってるだろうがよく知らない。

 なんというか、被災者の少女を主人公にして何か現代日本に対する切実な思いのもと本作を撮ったのだろうが、あまりそういう風にのめり込んでは見られなかった。というのは直前に論理学のゼミで発表しており、先生に指摘されたことを頭の中で復習しながら見ていた私も悪いのかもしれないが(まあ悪いだろう)、しかしなんというか所詮アニメでこういうテーマを描くのは難しいのかもしれない。私のようなアニメ至上主義者が言うのもなんだが。もう少し建設的な言い方をすると、アニメの得意技はもっと隠喩的というか寓話的な表現なのではないかと思う。その点で「君の名は。」の方がもっと良い線いっていたかなと。それかもっとアニメっぽくないアニメにするべきだったか。ぬことか出さずに。

 以下個別の論点。

 なんか画面に虫みたいのが付いているカットがあったがなんだろう。カメラに虫が付いているという演出かと思ったがカットが変っても付いていたのでそうではないっぽい。劇場のミスか!?

 私は羅小黒戦記のオタクなので猫作画にはうるさいのだが、ダイジンはけっこう良かった。平気でけつなあなを舐めるあたり、シャオヘイよりも知能が低くてより人間感が薄い。人間嫌いの猫好きの人にはダイジンの方が良いかもしれない(まあけっこう酷い目に遭うが…)。

 けろりら氏が原画にクレジットされていた。この人よく働くなあという印象がある。名前が特徴的だから目に付きやすいだけだろうか。

 最近の作品にありがちだが、全てを説明せず「考察代(こうさつしろ)」を残している*3。いちばんわからんのは左大臣(?)である。なんじゃあいつは。ノルウェージャンフォレストキャットかというぐらいでかい。叔母さんにのりうつるような悪さをして登場したが、その後は味方っぽいムーブだったので混乱した。あとダイジンの能力? なんか認知を歪ませていると思う。なんでダイジンと呼ばれだしたのかも分らん。あとなんで常世地震の時の東北の港町のようだったのかよくわからん。椅子の脚が一本なかったのは地震で壊れたのだろうか(なんか見落しているような…)。あと細かいところで言うと、たびたび二頭の蝶が出てきていたがあれは要石の化身みたいな感じだろうか、とか。まあ気が向いたら考察を調べます。

 松村北斗くんの声が宮野真守みたいに聴こえてワロタ。そして隣に座っていたお姉ちゃん二人組はどうも北斗くんのファンみたいだった。ジャニーズ効果ありますね。

 私はトンキンに久しく行っていないが、新海作品の中で見れてよかったなあ。上京して初めて観た映画が「言の葉の庭」だった。それも新宿御苑の近くのバルト9で観た。エモい。

*1:輪るピングドラム」でもタイトルが出てきた。短編集の中の一つでなくこれがタイトルになった本が出てきたのである。

*2:最初期の短編「彼女と彼女の猫」のタイトルとか春樹っぽいし「雲の向こう、約束の場所」は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の影響がある。全体的にモノローグも春樹っぽいよね。

*3:説明しまくる作品も増えているようですが。