これは大変な傑作です。
ギンツ・ジルバロディスの長編デビュー作。同監督の『Flow』という作品が公開されるので、本作がリバイバル上映されている。私は初めて観た。そして感銘を受けた。
エンドロールと言えるものがない。スタッフ表が一枚だけしか出ない。本作はそれくらいなにもかもを一人で作っているのである。日本では昔の新海誠がそんな感じだったが、本作は音楽もジルバロディス監督が自分で作ったらしい。音楽も印象的なものだったので驚いた。
以前に観た『ロボット・ドリームズ』と同様セリフがまったくない。私は無駄なセリフが嫌いなので高評価である。
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本作は『ロボット・ドリームズ』のような繊細な感情を上手く表現した作品ではない。もっと素朴である。映像も全体的に素朴。派手な動きや視覚効果はなにもない。ただデザインやその配置が美しい。キービジュアルにもなっている「鏡の湖」の上を白い鳥たちが飛ぶシーンなどまさしく息を呑むという感じだった。絵画のような発想である。
また素朴ゆえの、シンプルで原初的な感動がある。生命とか存在そのものへの感動というのか。小鳥が初めて飛ぶシーンも良かったが、その前のキツネ(?)との駆け引きには生命の存在感とでも言うべきものがあった。監督は普段から生き物を愛してよく見ているのだろう。
謎の黒い巨人や墜落した飛行機など、村上春樹とか現代文学っぽい寓意が散りばめられている。この手のモチーフはアニメーションと相性がいいはずなのだが、こうした作品はそれほど作られてこなかった。本作は新しい道を切り開いている。
マップを探索するような構成と三次元的な広大な世界はオープンワールドのゲームを思わせる。じゃあゲームとなにが違うのかといったら、ドキュメンタリー風のカメラワークと、ゆったりした時間の流れなんじゃないかと思う。あえてハンディカメラで撮ったような映像で臨場感がある。またカメがのそのそ歩くシーンの間なんかは極めて映画的である。↓のインタビューも見よ。
『Flow』もこんど観にいく。楽しみです。
