曇りなき眼で見定めブログ

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村上龍『愛と幻想のファシズム』というメチャクチャな小説を読んだ!(ついでに庵野秀明論)

 近代文学をいろいろ読んでいた私だが、趣向を変えて1984年から連載された村上龍『愛と幻想のファシズム』を読んだ。

 『限りなく透明に近いブルー』という私小説っぽい作品でデビューした龍だが、この作品で経済に目覚め、以降経済をテーマにした小説を多く書くようになる。2000年頃に書かれた『希望の国エクソダス』という経済小説も私は前に読んだことがある。

 本作『愛と幻想のファシズム』だが、読みはじめはとにかくメチャクチャな小説という印象だった。主人公のトウジが殺人に躊躇がなさそうだったり、メチャクチャな暴言を吐いたり。しかしそれがだんだんと形を成していき、ちゃんとした組織に関する話になっていく。と思いきや、今度はトウジはそのちゃんとした感じに疑問を抱いていく。そこが龍の狙いだったっぽい。政治経済をテーマにしたエンタメ小説だったら、だんだん組織が大きくなっていく過程を描くだけかもしれないが、本作はトウジと対になるゼロという人物も出てきて、そうした過程への疑念が常に挟まれる。その点で本作は文学である。

 インターネットが出現する前に書かれたので、情報戦の描写は古くなっている。しかし情報を撹乱したりメディアを上手く使うことで世界を侵略するという発想は正しいと思う。また本作で描かれたような一部の大金持ちがアメリカを支配してさらに世界を支配して、という構図も現実のものとなってきている。怖いですね〜。

 本作は官僚やテロリストやギークが活躍するが、純粋なアカデミアの人間がほぼ出てこない。龍は学者なんてグズだと思っているのかもしれない(悲しい)。

 それと北海道独立というモチーフが『希望の国エクソダス』と共通している。龍は北海道にどんなロマンを抱いているのか!?

 で、なぜ本作を読んだのかというと、私が経済に興味が出てきたのもあるが、敬愛する庵野秀明監督が本作から影響を受けたと言っていて前から気になっていたからなのである。本作の主人公の名前は鈴原冬二と相田剣介(ゼロの本名)で、そのままエヴァンゲリオンのシンジくんの友だちの名前に使われている。その他にもエヴァには本作から名前を取ったキャラクターがたくさんいる。

 庵野さんはゼロに惹かれたらしい。

web.archive.org

ゼロというキャラクターの空虚な感じは、庵野さんを代表とする90年代カルチャーを予見している感じはある。

 また、本作のテクノクラートギークがキビキビ動いて作戦を行う感じは『シン・ゴジラ』にも似ている。良識派リベラルを鼻で笑う感じも似てるかも(悲しい)。