曇りなき眼で見定めブログ

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上限・下限

 ↓これの続き

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 \langle X, \sqsubseteq \rangle を順序集合とする。部分集合 A \subseteq X をとる。b \in X がすべての a \in A について a \sqsubseteq b のとき、bA上界であるという。例えば順序集合 \langle {\mathbb N}, \leq \rangle について {\mathbb N} の部分集合 \{1, 2, 3\} をとると、5 なんかはその上界である。

 順序集合 \langle X, \sqsubseteq \rangleA \subseteq X について、B \subseteq XA の上界をすべて集めた集合とする。c \in B がすべての b \in B について c \sqsubseteq b のとき、cA上限であるという。上限は最小の上界で、あるとすれば A から一つに決まる。

 一つに決まることの証明がちょっとおもしろい。数学でよくあるテクニック的なのが使われる。cc'A の上限であるとする。上限ということは上界でもあるので、上限の定義から c \sqsubseteq c'c' \sqsubseteq c が成り立つ。反対称律から c = c' である。このように、一つに決まることの証明は、二つ用意したらそれらが等しくなることを示せばよいことが多いんである。

 A の上限があれば A から一つに決まるということは、A の上限は A を使った記号で書いてもよいということである。なので A の上限を \bigvee A と書くことにする。

 上限が「あれば」とか書いてきたが、ない場合もある。例えば有理数をすべて集めた集合  {\mathbb Q}を考えるとわかりやすい。\langle {\mathbb Q}, \leq \rangle はもちろん順序集合になる。{\mathbb Q} の部分集合として \{x \in  {\mathbb Q} \mid x^2< 2\} をとろう。21.5 はこの上界だが、1.42, 1.415, ... などと上界はどんどん小さくできて果てがない。よって \{x \in  {\mathbb Q} \mid x^2< 2\} \subseteq {\mathbb Q} には上限がないのである。これどういうことかというと、\sqrt{2} を上限としたいのだが、\sqrt{2}有理数ではないのでアカンのである。{\mathbb Q} でなく実数の集合 {\mathbb R} をとると、もちろん \sqrt{2} がこの上限になる。どんな部分集合(ただし空でなくて上界を持つ)にも上限があるかどうかというのは実は有理数集合と実数集合を分ける重要な性質である。{\mathbb N} の部分集合として \{x \in  {\mathbb N} \mid x^2 < 2\} をとったときに上限があるかどうかも考えてみてちょ。

 

 上界に対して下界もある。\langle X, \sqsubseteq \rangle を順序集合とする。部分集合 A \subseteq X をとる。b \in X がすべての a \in A について b \sqsubseteq a のとき、bA下界であるという。例えば順序集合 \langle {\mathbb N}, \leq \rangle について {\mathbb N} の部分集合 \{5, 6, 7\} をとると、3 なんかはその下界である。

 順序集合 \langle X, \sqsubseteq \rangleA \subseteq X について、B \subseteq XA の下界をすべて集めた集合とする。c \in B がすべての b \in B について b \sqsubseteq c のとき、cA下限であるという。下限は最大の下界で、あるとすれば A から一つに決まり、\bigwedge A と書く。