曇りなき眼で見定めブログ

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チューリングラブという曲の謎の理系観

 ちょっと前に「チューリングラブ」という歌が流行った。


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歌詞も映像も謎が多い。

 コンセプトとしては理科系の言葉や発想で恋愛を歌うということなんだろうが、なんか「理系」というイメージのもといろんなものがごっちゃになっている。

 アニメMVに登場する男の子女の子はどうも化学実験なんかをやる際の格好をしているっぽい。そこに「チューリング」というタイトルの文言が重なるから違和感がある。チューリングは理論生物化学のような分野での業績もあるが、まあ一般にはコンピュータの基礎理論に対する貢献が有名である。まずもって数学者であり、それも数学基礎論/数理論理学というかなり抽象的な分野から出発している。私は哲学の大学院で論理学をやっていて、指導教員はチューリングの哲学を研究していたりする。そういう訳でチューリングは理系の中でも哲学に接近しがちな分野の人間じゃないかと思う。で、私の兄が大学院で実験などをやる化学を専攻していたのだが、研究分野のこととなると全然話は通じ合わない。

 また歌詞には「証明」というのがキーワードのように出てくる。「理系が恋に落ちたので証明してみた」というマンガなんかもあるが、証明というのも数学とその他理系分野では結構ニュアンスが違うんじゃないかと思う。数学で証明と言ったら公理や前提から演繹することである。自然科学ではこの演繹が使えるケースは上手く数学に置き換える事に成功した場合のみで、基本的にはアブダクションとか帰納法とかいうのを使う。これらを証明と呼ぶかどうかは微妙なところで、チューリングラブも「理系が恋に落ちたので証明してみた」というタイトルもこれらを混同している感じがする。歌詞で中学や高校の数学の証明問題におけるような意味での証明と「実証」という語が言い換えられているような部分があるのがその証拠である。

 他にも高校入試に出そうな問題をイメージした一節なんかがあったりする。作詞した人はこの辺で理数系の勉強に挫折したんじゃなかろうかなあというのが伺われたり…。

 まあ「理系」というのは一括りに出来ないぐらい広く複雑だということです。