前から気になっていたのだが、イギリスで中国人留学生から中国でめちゃ流行っていると聴きさらに興味がわいて視聴した。調べてみると「なんで春日影やったの!」というあの伝説のシーンが、中国では野獣先輩に次ぐぐらいの勢いで流行ったらしい。
青春モノと思いきややたらとドロドロギスギスしているという評判だけ聴いていた。
まず『MyGO!!!!!』を見ていて思ったのが、「落ち着けよ」ということである。みんな沸点が低すぎるというか、もうちょっと耐えることを学ばねば。相手の言うことを逃げずに最後まで聴いたりとか、それで避けられるトラブルも多かっただろうに……。まあ若いからしょうがないか。
けど私は長崎そよちゃん(そよりん)がけっこう好きになった。というか「あのそよ」推し。あのんちゃんを中心にバンドのメンバーに対しては腹黒い一面を見せられる、というのが良い。シリーズ構成の綾奈ゆにこ氏という人は百合界の重鎮らしいが、関係の描き方はたいしたもんである。
で『Ave Mujica』なのだが、『MyGO!!!!!』よりももっとめちゃくちゃである。『MyGO!!!!!』は「バンドを通じて若者の人間関係や葛藤を描く」というコンセプトが伝わったのだが、『Ave Mujica』は何がやりたいのかわからない。芸能界やスターのリアルな裏側を描くのかと思いきやそうではない。もっと超常的なトラブルに見舞われる。綾奈氏のトゥイッターを見ている感じ、制作陣にもいろいろ混乱があったっぽい。
しかしそのめちゃくちゃさがおもしろいのである。青春モノでも音楽モノでも業界裏側モノでもない、ジャンル不明の、得体の知れないおもしろさだった。心理劇というか、エヴァの使徒が出てこない回をずっとやってるのに近いかもしれない。もはや音楽とかバンドとか関係なくなっていくのがおもしろい。
そんななかでも両シリーズのキャラクターたちはみんな「バンド」というものにやたらこだわっていて可笑しい。バンドというのが神聖な概念みたいになっている。バンドリというコンテンツの制約が、謎のバンド神格化に結実している。
そうした「コンテンツ」の制約のなかでも「ドラマ」を描き切ったのは偉い。どちらのシリーズも最終回はたっぷりとライブの模様を描いてちゃんと帳尻合わせているのも偉い。
劇中の音楽についても少しだけ。私はAve Mujicaの音楽を担当したDiggy-MO'がちょっと好きなのだが、Diggyがこんなに世界観に合わせて曲を作れるのかと驚いた。意外な才能。