異世界アニメをいろいろ見るシリーズ。前は『聖戦士ダンバイン』を見たが次は『無職転生』。
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原作はいわゆる「なろう」系を代表する作品らしい。作者は「理不尽な孫の手」なる人。
異世界転生ものの隆盛の基礎を築いた作品だとか。『このすば』や『リゼロ』と同時期に始まっていて、これらと同じかそれ以上に偉大な作品らしい。しかしアニメ化は遅れていた。スタジオバインドはこの作品をアニメ化するために作られたとか。
なかなかアニメ化が進まなかったのも頷ける。とにかく物語の構想が雄大で、計1年アニメをやったがまだ世界の全貌が掴めない。また、冒険ものかと思ったら学園ものになったりと、ジャンル横断的なところもあり、これがおもしろい。『チェンソーマン』の作者のタツキ先生は話の途中でジャンルが変わる作品をやりたいとか言っていていてグダグダになったが、本当はこういうのがやりたかったのだろうなあと思った。理不尽な孫の手先生の構成力がすごい。
いわゆる「なろう」系というと、チートとかハーレムとかそういうイメージがあるが、こういうトップ層の作品はそうではない。むしろ辛いことばかり起きる。ハーレム展開といえばまあそうなのだが、妻を増やす際にもとの妻に土下座して説得したりしておもしろい。
無職の引きこもりが転生してやり直すというのも今ではテンプレだけど、そういう作品への私のイメージと違い、主人公が前世とちゃんと向き合っている。そういうのをぜんぶ忘れてやり直すのかとおもったらそうでない。偉い。
スタジオバインドの力の入れ様は凄まじく、作画も大変よい。バトルやエフェクトも良いし、またエロさがすごい。
エロと言えば、主人公を中心に登場人物の性欲が強すぎる。主人公のやってることがセクハラというよりもはや性犯罪で、このへんは原作者の倫理観を疑う。アニメ制作者や声優たちは嫌じゃないのかな? と思った。『チェンソーマン』みたいな悪ぶってる作品とは違う。理不尽な孫の手先生は、タツキ先生みたいな「ブッ飛んでる風」とは違う、本当に社会不適合な人なのかもしれない。そう考えると『チェンソーマン』てフェイクだよね。
しかし、そうした性にまつわる面を隠さずに描いているという点で誠実といえば誠実かもしれない。また私はこの登場人物たちのセックスへの執着を、村上春樹作品みたいとも思う。文学である。